2025年7月18日、シナジーマーケティング(以下、当社)のサポートグループ※1 が、株式会社リックテレコム様が主催するコンタクトセンター※2 業界における表彰制度「コンタクトセンター・アワード2025」に参加しました。
近年、AI技術の進化に伴い、カスタマーサポートの現場でもAI活用による変革が急速に進んでいます。当社でも、お客様へのAIサポートの提供、人材育成のためのLMS※3 の開発など、AIを活用した取り組みを進め、お客様対応と人材育成を両輪として進化させています。今回はその取り組みを発表いたしました。大規模なコンタクトセンターを擁する大企業が数多くエントリーするなか、なぜ当社は挑戦を決めたのか。本アワードでの発表内容や得られた気づき、今後の展望を、登壇資料も交えながらご紹介します。
コンタクトセンター業界最大の専門誌「コールセンタージャパン」を発刊する株式会社リックテレコムが主催(共催:イー・パートナーズ)する表彰制度。2003年に創⽴され、2025年で22年⽬を迎える。コンタクトセンターの運営において、革新的な戦略、効果的なオペレーション、先進的なテクノロジーの活用、そして人材育成など、多岐にわたる側面で優れた実績を挙げた企業や個人を評価し、業界全体の発展に貢献することを目的としている。
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※1 当社が提供するマーケティングSaaS「Synergy!」のサポート業務を担当するチーム。2025年10月現在、8名で構成される。
※2 企業や組織が顧客とのコミュニケーションを管理するための部署や機能。メールやチャット、SNSなど複数チャネルを用いて、顧客接点を最大化する。
※3 Learning Management System(学習管理システム)の略。オンライン学習や集合研修などの学習活動全体を効率的かつ効果的に管理・運用するためのプラットフォーム。
吉田 憲孝 / クラウド事業部 サポートグループ マネージャー
2017年中途入社。Synergy!導入におけるSIソリューションのPM、テクニカルサポートを経て、サポートGのマネジメントを務める。
池田 靖洋 / クラウド事業部 サポートグループ
2004年中途入社。Synergy!のプロダクト開発を経て、社内外のお問い合わせの技術支援を担当。
山脇 美佳 / クラウド事業部 サポートグループ
2012年中途入社。入社以来、Synergy!のカスタマーサポート業務を担当。現在はチームの運営やサポートページの管理、社内外の対応フォローを担う。
※部署名・役職は取材当時(2025年9月)のものです
当社にとって、カスタマーサポート領域のアワードへのエントリーは初めての試みでした。大規模なコンタクトセンターを擁する大企業が中心のコンタクトセンター・アワードへの挑戦に踏み切った背景には、大きく3つの目的があります。
■主な参加目的
エントリーしているすべての企業の取り組みを閲覧できるため、他社の事例から新たな学びを得て、自社サービスをさらに磨き上げたい。
チームとしてこれまでの取り組みを論理立ててアウトプットすることで、参加メンバーのスキルアップと、振り返りの機会として活用できると考えた。外部からの客観的な評価も得られるため、当社の取り組みの現在地を客観的に把握し、サービスの成長につなげたい。
AI活用を中心とする当社の先進的な取り組みを積極的に社外に発信することで、当社および当社サービスの「Synergy!」「Synergy!LEAD」をより広く知ってもらい、必要としているお客様に届けたい。
数あるアワードのなかから「コンタクトセンター・アワード」を選んだ理由は、3つあります。1つ目は、主催であるリックテレコム様が専門誌を発行されており、専門性が高いと判断したこと。2つ目は、すべてのエントリー企業の取り組みを知ることができるので、私たちチームが成長するための貴重な財産になると考えたこと。3つ目は、コンタクトセンターの規模や業態(BtoB・BtoC)にかかわらずエントリーが可能で、広い視野を持つ審査員に評価をいただけることです。
コンタクトセンター・アワードへの挑戦を決めたのは、2025年の年明け。一次審査までの準備期間が短いなか、チームを牽引するマネージャーの吉田を中心に、中核を担う池田、山脇の2名が参画し、申請カテゴリーの選定から発表内容の企画、登壇資料の作成までを3人で行いました。
特に苦労したのが、「どのカテゴリー に、どのような内容でエントリーするか」の決定でした。世の中の時流や市場の動向、近年の取り組みから、「AI活用にまつわる取り組みを発表する」という方向性はすぐに決まりましたが、技術的なアプローチや人材育成の取り組みといった複数の切り口があったため、発表の骨子やストーリーをどう組み立てるかに苦慮しました。
最終的に「ストラテジー部門」というカテゴリーを選択しました。当社のようなSaaSベンダーは、お客様に利用を継続していただける環境づくりが非常に重要であり、サポート対応の次世代化とチームの持続的な成長は、事業課題の1つという考えからでした。
登壇資料の作成ではページ数や記載内容の制約があるため、取り組みのすべてを盛り込むことはできません。そのため、これまでのチームの歩みを振り返り、データを精査しながら伝えたいポイントを厳選し、言語化していきました。
一次審査の直前に怪我によるスピーカーの変更というハプニングに見舞われましたが、3人で協力して乗り越え、無事当日を迎えることができました。
一次審査は、池袋サンシャインシティのカンファレンスルームで行われました。当社は、「ストラテジー部門」へのエントリー企業でトップバッターを務めることになりました!
発表テーマは、最終的に「AI活用と人材育成のシナジー効果!知識の壁と持続的成長への取り組み」としました。当社が提供する「Synergy!」のサポート業務における現在から将来にわたる課題を、生成AIを活用して解消しようという取り組みをご紹介しました。発表は、吉田と池田が担当しました。
知識の壁と持続的成長という2つの大きな課題を乗り越えるため、私たちは以下7つのアプローチを定義しました。
その取り組みとして、2つのAIシステムを構築しました。
これらは自社で企画から設計、開発までを手がけ、特にAIサポートについてはお客様に直接生成AIの機能をご利用いただく、当社としても初の試みでした。
【Synergy!ケンテイ】
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※4 Retrieval-Augmented Generation(検索拡張生成)の略。外部のデータベースを参照することで、事前学習を必要とせず生成AIがより正確な回答を生成する技術。
※5 生成AIが事実に基づかない、あたかも真実であるかのように聞こえるでたらめな情報を作り出す現象。
※6 Large Language Models(大規模言語モデル)の略。膨大な量のテキストデータで訓練された、高度なAIプログラム。
お客様向けの初のAI活用事例であるSynergy!AIサポートは、地道な改善を通じて一つひとつの課題を克服し、正式な提供に至ったことを発表しました。
このAI活用と人材育成の施策による、2つのシナジー効果を発表しました。
今回の取り組みを成功に導いたのは、以下の3つのポイントです。
発表後は質疑応答の時間。審査員の方々からは、「ITベンダーのなかでも、AI活用がかなり進んでいる印象。感銘を受けた」といった好評価をいただきました。取り組みへの高い関心が伺える「AIが解決できなかった場合のケア導線」や「AIの回答精度を高めるためのタグ付けの考え方や手法について」などの質問を多数いただき、質疑を通じて発表者としても参考になる点が多くありました。
惜しくも一次審査通過は叶いませんでしたが、「今回の挑戦では、多くの学びと未来への手応えを得られた」と3人は語ります。
メインスピーカーを務めた吉田は、次のように振り返りました。
「反省点として、今回の取り組みが、当社の事業課題の解決においていかに不可欠であるか、つまり『お客様の成功のご支援が当社の事業成長に直結する』という、この活動の核心的な重要性を十分にアピールしきれなかった点が挙げられます。SaaSサービスは、お客様に継続して利用していただくことが何よりも重要です。弊社の『Synergy!』は、お客様が自ら施策を実行して成果を出すことで価値が生まれるツールであるため、『お客様の施策をいかに成功に導くか』が、サポートグループにとって最大のミッションとなります。
一次審査を通過できなかったことは残念でしたが、今回の挑戦は私たちにとって多くの収穫をもたらしてくれました。審査に向けた資料作成では、自分たちの活動を客観的に見つめ直し、言語化する力が身につきました。チームで知恵を絞る過程では、個々のスキルアップと結束力の向上につながりました。加えて、他社の素晴らしい取り組み事例に触れたことで、自社の強みやさらなる改善のヒントを認識でき、大きな学びとなりました」
また、準備から登壇までの取り組みを通じて、チームに良い変化があったと語りました。「日々の業務データを改めて整理・分析することで、成果が可視化され、チームが何に向かって進んでいるのか、目標意識が統一できました。今後の業務改善や施策でも効果的に取り入れたいと思います」
同じく登壇した池田は、「エントリーした当初は、私たちの取り組みはまだ大々的に社外に発表できる状況ではないのでは……との不安がありました。ですが、いざコンタクトセンター・アワードに参加してみると、私たちの課題感や取り組みは知見が豊富な他社と比べても遜色がないことが確認でき、大きな収穫になりました。反面、AI導入前から顧客満足度90%台を維持してきた実績があるだけに、それを進化させた取り組みの発表で結果を残せなかったことは残念に思います」と率直な想いを語りました。
ともに準備を進めた山脇は、「コンタクトセンター・アワードへのエントリーが決まってから一次審査までの期間が短かったことに加えて登壇資料の作成も初めての経験で、難しい面がありました。このような状況でも、視覚的に分かりやすいだけでなく、当社の特徴や取り組みの成果をしっかり盛り込んだ資料にできた点はよかったです。また参加する機会があれば、1年かけてじっくり準備して臨みたいです」と抱負を語りました。
当社のサポートグループは今後、AIをはじめとする先端技術を駆使し、サービスをさらに磨き上げていきます。具体的には、お客様の利便性の向上とサービス定着率の向上をめざします。その中心となるのが、「Synergy!AIサポート」のブラッシュアップと利用の促進。現在は、マニュアルおよびFAQやナレッジによる回答に留まっていますが、今後は、お客様の利用状況からパーソナライズされた、より最適な回答を提供できると考えています。これにより、一般的な問い合わせ対応をより広くAIに任せることが可能になります。AIは24時間365日いつでも回答できるため、お客様の利便性向上にもつながります。
加えて、サポート窓口の担当者(人間)は、AIでは対応が難しい「顧客データのファネル分析の実現方法」や「カスタマージャーニーの収集」といった、専門的かつ複雑な問い合わせに集中できるようになります。AIを活用することで、カスタマーサポート領域を超えたご相談にも、より迅速かつ正確に対応できるよう努めて参ります。
今回の学びを経て、「カスタマーサポート領域におけるAI活用の変化と、それがもたらす未来」についても3人に聞きました。
山脇は、AIがもたらす変化に期待を寄せています。
「現在も人材育成にAIを活用していますが、今後はより広い範囲で活用できると思います。一例ですが、人間の代わりにロールプレイングを実施する、問い合わせ対応のシミュレーションを行う、スキル評価の効率化を図るなどです。人間にしかできない業務により集中できるようになるため、お客様の利便性向上だけでなく、ビジネス機会の創出支援などの新しい価値提供もできるようになるのではないかと考えています」
池田はカスタマーサポート領域の理想的な姿について、次のように語りました。
「理想を言えば、プロダクトは『サポートが不要な状態』が望ましいと考えています。つまり、サポート担当がいなくてもスムーズに利用できる状態です。お客様が使い方を知るために問い合わせをしなければならないのは、不便ですよね。これを実現する手段としては、プロダクトの開発段階からAIを活用してユーザビリティを向上させたり、システム内でユーザーの動きを検知し、問い合わせが発生する前にAIが解決策を提案するなど、現時点でも複数考えられます。今後は、AIの進化を見据えて、開発や営業などの部門とも連携しながら、『お客様がストレスなく、意図通りにプロダクトを利用できる世界』を目指すようになるのではないでしょうか」
吉田は、AIの活用がさらに一般化し、プロダクト自体もAIを活用したものへと変わっていくと語ります。
「私たちサポートグループも、スキルや体制を常にアップデートしていく必要があります。近い将来、ユーザーの行動分析やFAQ・ヘルプページの作成といった業務はAIの役割にシフトするでしょう」
続けて、これからのサポート担当者に求められる役割について、次のように述べました。
「AIが提供する情報を理解したうえで、お客様の複雑な課題を効果的に解消すること、つまり人間が担うべき専門性を高めることがより重要になると考えています」
今回の取り組みは、AI活用が進む未来を見据えた組織機能向上への大きな一歩だったと、エントリーを通じて得た手応えを語りました。
いかがでしたでしょうか。
当社は今回の経験を活かし、お客様の利便性向上だけでなく、事業成長や理想実現に向けてさまざまなご支援を続けてまいります。シナジーマーケティングの今後のサービス提供に、ぜひご期待ください。