今年も出た、ムクドリの群れ ふん害、騒音…悩みは尽きず 里山が開発、ねぐらを街へ

2021/11/15 08:43
夕暮れに鹿児島市のJR鹿児島中央駅周辺に集まるムクドリ=10月26日
夕暮れに鹿児島市のJR鹿児島中央駅周辺に集まるムクドリ=10月26日
 夕暮れになると市街地の街路樹などに集まるムクドリ。鳴き声やふん害に悩まされているという声が絶えない。姶良市では鉄塔をねぐらにする集団も現れた。この集団はなぜか10月末に姿を消したが、秋から冬は繁殖期を終えたムクドリが集団でねぐらをつくる時期。専門家は「対処療法で追い払うのでなく、鳥の生態を知り、共生する方法を考えるべきだ」と指摘する。

 ムクドリがねぐらにしていたのは、姶良市宮島町の九州電力送配電の変電所にある高さ約30メートルの鉄塔2基。市役所に近く、マンションなどもある住宅地だ。6月ごろから集まり始めた。

 鉄塔を管理する九電ハイテックは、送電線に影響ない範囲で、鉄塔の一部を市販の防鳥網で覆う対策をとったが、期待したほどの効果はなかった。夕方になると周囲に数百羽の鳴き声が響き、隣接する駐車場の車はふんまみれになった。

 10月末に群れは姿を消した。原因は分からない。鉄塔前の14階建てマンションの住民女性(61)は「一晩中鳴き声がうるさくて窓を開けられなかった。いなくなってほっとしたが、また戻ってくるのではないか」と心配する。

 長年、悩まされてきたのが鹿児島市のJR鹿児島中央駅周辺だ。市公園緑化課は9月、ねぐらの一つになっていた西口のカエデ4本を剪定(せんてい)。東口のクスノキに反射テープをつけたほか、10月はムクドリが止まりにくいよう枝を払った。同課は「クスノキはシンボルツリーなので、景観を残しつつ地道に取り組んでいく」。

 ムクドリは害虫を補食する益鳥で、本来は田畑を好む。里山の開発が進み、大木がある駅前広場や街路樹が連なる大通り、ビルの屋上など人工物にもねぐらが移っているとされる。

 全国でムクドリとの“いたちごっこ”は続いている。嫌がる音や光などを使って追い払う例もある。ただ、効果は限定的で「群れを分散させて被害を増やしている」との指摘もある。

 千葉県我孫子(あびこ)市は駅前に集まるムクドリを天敵のタカで追い出す一方、人が少ない湿地帯や河川敷へ生息場所を移す方法を検討している。同市環境経済部は「相手は生き物で簡単ではない。共生できる方向性を探っていきたい」と話す。

 ■敵視せず共生を

 都市鳥研究会(埼玉県)の越川重治副代表の話 繁殖を終えたムクドリは、ヒナを連れて8月末から9月にかけて北海道、東北方面から南へ移動し、10月ごろが南下のピークになる。本州ではかつては里山の防風林のケヤキをねぐらにしていたが、開発で居場所がなくなり、都市の街路樹をねぐらにするようになった。

 クスノキなどの常緑樹は葉が落ちないため、安全と学習して定着。そこを追い払われると、人工物の電線やビルなどをねぐらにしたりする。

 私の調査では追い払っても隣の駅や町に移っていた。広域的な対策が欠かせない。追い払うのではなく、人の少ない場所に移動させることも考えてもらいたい。

 ムクドリは大量発生しているように見えるが、都市以外では減っている。ムクドリが生態系の中で果たす役割を知ってもらい、敵対視せず、人と共生できるまちづくりが必要だ。
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