クルーズ船観光客でにぎわう天文館=鹿児島市東千石町
南日本新聞「#こちら373」をはじめ、読者の声に応える報道で連携する熊本日日、宮崎日日、西日本の九州4紙は、合同でインバウンド(訪日客)についてアンケートを実施した。全体の8割超が訪日外国人が増えたと実感。増加を「歓迎する」と答えた人は鹿児島県と宮崎県で6割を超えた一方、福岡県や熊本県では否定的な回答が多かった。九州の北部と南部で受け止め方に大きな差があることが明らかになった。
アンケートは4月25日~5月6日に無料通信アプリLINE(ライン)などで呼びかけ、1154人が回答した。うち鹿児島県在住者は190人だった。
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行した2023年5月以降、自宅や職場周辺など生活圏で訪日客の増加を感じるか尋ねたところ、「非常に感じる」は福岡が69%、熊本では60%に上った。鹿児島は43%、宮崎34%だった。
増加について「歓迎する」「どちらかといえば歓迎する」と答えた人は鹿児島で67%、宮崎で63%。一方、熊本は47%、福岡は37%で、特に福岡では「歓迎しない」「どちらかといえば歓迎しない」が計54%と半数以上だった。訪日客の急増を実感するほど歓迎しない割合が増える傾向がうかがえる。
訪日客が増えるメリットを複数回答で尋ねたところ、「地域経済がうるおう」の55%が最多。一方、デメリットと感じることは「宿泊施設が高くなる」(57%)が最も多く、「街中のごみが増える」(50%)が続いた。
24年の訪日客数は3686万人で過去最高だった。政府は30年の訪日客を6000万人に増やす目標を掲げる。九州産業大の千相哲教授(観光学)は「増加が住民の暮らしを豊かにするという構図になっていない。行政はメリットを住民に分かりやすく伝えるとともに、訪日外国人向けにマナーの啓発を進めるなどデメリットの緩和を図るべきだ」と指摘した。
九州運輸局によると、九州から入国する訪日客は18年にピークの512万人に達した後、コロナ禍の20~22年は激減。その後、急回復し、昨年は過去2番目に多い501万人だった。
このアンケートは多様な意見を聞き取るのが目的で、無作為抽出の世論調査とは異なる。