いちき串木野市立川上小学校|椋鳩十と武田恵喜秀が作った「心のよりどころ」

2024/04/07 14:00
自然に囲まれた川上小学校=いちき串木野市
自然に囲まれた川上小学校=いちき串木野市
 1951年3月制定の校歌は、児童文学者の椋鳩十=本名・久保田彦穂=さんが作詞、武田恵喜秀さんが作曲と、戦後鹿児島の文学界と音楽界をけん引した2人が手掛けた。創立100周年記念誌には「講堂を新築する際にピアノ購入の機運が高まり、子どもの心のよりどころとなる校歌も作ろうとなった」とある。

 学校は旧市来町の中心部から北東へ約5キロにある。周辺に緑の山やホタルが飛び交う八房川があり、きれいな星空が広がる。4番まである歌詞はそれぞれ、〈山だ山だ〉〈星だ星だ〉〈川だ川だ〉〈空だ空だ〉と始まり、豊かな自然を易しい言葉で子どもたちに伝えようとした椋さんの思いがうかがえる。

 学校行事には近隣住民が積極的に関わり、地域とのつながりは強い。1番の〈木々の芽の緑の希望〉は、そんな環境でのびのびと成長する子どもたちの様子と重なる。

 全校児童は29人(3月末現在)の小規模校。「川上ブランド」と称して取り組む英語や食農教育、読書指導、ICT活用の各活動が特徴だ。児童は1年生から校内放送で英語を使い、4番にある〈肩を組む世界の子らと〉のように、国際社会で他者と協働し活躍できる人材を目指す。タブレット端末でプログラミングにも挑戦し、全国大会での入賞歴もある。

 新型コロナウイルス対策で児童たちはここ数年、元気よく校歌を歌えなかったという。牧健一校長(55)は「子どもたちが再び校歌を明るく歌えるようになり、愛校心や地域に感謝する心を育んでほしい」と願う。

 ●メモ 1882(明治15)年、現在の地で開校した。校区面積は旧市来町の半分を占め、10集落が点在する。学校田や畑では、年間を通じて地域住民と収穫作業に汗を流す。児童は市指定の無形民俗文化財「川上踊」の伝承活動にも取り組む。2004年度からは特認校となり、校区外からも児童を受け入れる。

(南日本新聞2023年4月3日付)

校歌の風景

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