自衛隊基地の整備が進む馬毛島=10日、西之表市の馬毛島上空(本社チャーター機から)
青い海をそこだけ絵の具で着色したかのような茶色の大地が広がっていた。米軍空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)の移転を伴う自衛隊基地整備の着工から12日で2年となる鹿児島県西之表市馬毛島。10日、チャーター機で上空から見た。国策による島の基地化は着々と進んでいた。
完成時期は当初から約3年延長され2030年3月となったが、この2年で島は激変した。島内に仮設道路が張り巡らされ、ダンプやクレーンの重機、住居とみられる建物も確認できた。今後5年間でさらに無機質な建物が立ち並び、変貌していくのだろう。
25年度にも始まる見込みだったFCLPは、28年以降になるとみられる。島中央に「く」の字のように整備される2本の滑走路は確認できなかった。
周囲16.5キロ。しばらく無人だった島には昨年10月時点で工事関係者2860人が住む。基地整備関連の契約額は、調査段階の12年度から25年度予算分までで1兆円を超えた。工期延長を含め、住民への説明もままならない中での巨大事業。眼下の光景は、後戻りはしないという国の姿勢を象徴しているようだった。
島周辺の上空からは開聞岳や佐多岬がはっきりと視界に入り、県本土は目と鼻の先の感覚だ。中国の海洋進出を背景に、国は南西諸島の防衛力強化を掲げる。人知れず進む孤島の変化に、鹿児島が沖縄とともに国防の最前線に位置付けられている現実を再認識させられた。