社説

[自維が連立合意]「政治とカネ」はどこへ

2025年10月21日 付

 日本維新の会が、自民党との連立政権樹立に合意した。きょうの首相指名選挙で高市早苗総裁に投票し、初の女性首相が誕生する見通しだ。

 維新は、12項目の政策実現を求めた。うち憲法改正や外交・安全保障、エネルギーなどの基本政策は一致。企業献金の禁止については「総裁任期の2027年9月までの合意に向け協議」という努力目標の明示にとどまった。

 参院選の後、3カ月にわたり政治空白が続いている。政治に安定を取り戻し、前へ進むことは重要だ。しかし、政治不信や混迷の根幹である「政治とカネ」を置き去りにしたまま国民の支持は得られまい。連立が数合わせで終わるか。「改革政党」の存在感を高められるか。維新の真価が問われる。

 衆参とも少数与党である自民の新総裁に高市氏が決まった4日以降、政局は目まぐるしく展開した。

 総裁選は小泉進次郎氏優勢とみられ、水面下で自維連携の動きがあった。しかし、自民は高市総裁を選出した。国民民主党に秋波を送り自公国での多数派工作を図る中、公明党が「政治とカネ」問題への自民の対応に反発。26年間続いた関係を解消した。国民民主は「わざわざ少数与党に参加しなくていい」と後ろ向きとなった。

 立憲民主党と維新、国民民主が結束すれば、首相指名選挙で自民票を上回る可能性が高まる。非自民政権の樹立が現実味を帯びたが、立国は安保やエネルギー政策などの基本政策で折り合えず、その間に自維が急接近した。

 維新は自民との協議で「2本柱」の副首都構想と社会保障改革の実現に加え、国会議員定数の削減を「連立の絶対条件」とした。首長と議会を押さえることで議員定数削減をはじめ「身を切る改革」を実現した大阪での成功体験を再現させ、存在感を高めたいのだろう。しかし、国会議員定数削減については早くも与野党で批判が出ており、2党間で簡単に決められない。

 企業・団体献金を巡り維新が掲げてきたのは「廃止」で、公明が要求していた「規制強化案」より厳しい。自民は公明案すら受け入れず、連立離脱を招いた。ハードルは高い。定数問題は派閥裏金事件の検証や企業献金の見直しが確約されない批判をかわす唐突な“論点ずらし”にも映る。

 維新の政策要求にはスパイ防止関連法制定や外国人政策厳格化が含まれる。「ブレーキ役」を自任した公明が離脱し、政権が右傾化する懸念もある。勇ましさを訴えるばかりの姿勢は危うい。野党の政策や意見に耳を傾け、丁寧に協議するバランスのとれた国会運営を心がけてほしい。

 維新は閣僚を出さず、閣外協力の形を取る。真の信頼関係が構築されていない証左だ。中長期的な政治の安定をもたらせるか、不透明さも残した。

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