先月の衆院選で女性の当選者は前回2021年より28人増え過去最多の73人となった。立憲民主党など野党を中心に新人が躍進した。
前進といえるが、当選者に占める割合は前回の9.7%から、15.7%になったにすぎない。世界的にみても立ち遅れており、国連の女性差別撤廃委員会は先月、国会での男女平等を進めるよう政府に勧告した。
政治の現場は現職優位とされ、女性が参加するには経済的に不利な状況、私生活との両立の困難さといった壁が存在する。政策立案に多様な意見を反映するため「政治分野の男女共同参画推進法」は、政党に候補者数の男女均等を促している。各党「クオータ制」導入など女性の障壁を減らす具体策の検討が急務だ。
今回立候補した女性は314人で、これまで最多だった09年衆院選の229人を上回り初めて300人を突破した。自民が派閥裏金事件に関係した議員の公認や比例代表への重複立候補を見送る一方、女性や若手を擁立した事情も背景にあろう。一過性にせず、この傾向を定着させたい。
女性候補者を35%とする政府目標には多くの政党が届かなかった。自民は16.1%、公明は16%と低迷。立民は22.4%で、35%を超えたのは共産と参政のみだった。候補者の男女均等を促す推進法ができてすでに6年以上たつ。努力義務で罰則はないためか、進展が遅いと言わざるをえない。
列国議会同盟によると2月時点で日本の衆院の女性比率は約190カ国中163位だった。女性差別撤廃委員会の勧告は女性が選挙に立候補する場合、300万円の供託金を一時的に減額する措置を求める内容だ。日本はいまだに男女間の賃金格差が大きい。高額な供託金が女性の政治参画を妨げているとの問題意識は理解できる。
各国では一定の比率を女性に割り当てる「クオータ制」の導入が進む。比例名簿の順位を女性上位や男女交互にする手だても考えられる。各党が本気になれば女性候補増は可能なはずだ。
「政治は男性がやるもの」との意識は根強い。固定的な役割分担意識を反映した社会制度や慣行上、女性に能力があっても発揮できない現状を是正するのが法の趣旨である。問われているのは男性優先の構造で、「逆差別」とも言われがちな女性優遇にはあたらないと理解しておきたい。
鹿児島県内の小選挙区で立候補した12人のうち女性は2人にとどまった。これまで選挙区で当選した女性はいないが、変化の兆しはある。県議会は昨年、女性の割合が2割を超えた。女性議員ゼロだった自治体にも誕生した。衆院選の応援で存在感を示した女性議員も多かった。地方議員の裾野と厚みが国政進出の流れにつながるはずだ。