奄美市の奄美空港に米軍のオスプレイが緊急着陸した。九州防衛局は沖縄県の普天間飛行場に所属する米海兵隊のMV22が、警告灯が表示されたため予防着陸したと説明している。
米軍は日米地位協定に基づき、日本の民間空港を利用することができる。飛行中に機体の不調が見つかり、最も近い空港に着陸して乗員の安全を確保すること自体に何ら問題はない。だが、オスプレイのトラブルと聞いて不安を高める県民がいるのは当然だ。
米空軍のオスプレイが屋久島沖に墜落してから今月29日で1年になる。全乗員8人が命を落とす衝撃的な事故だったが、納得できる再発防止策は示されていない。自衛隊の同型機も含めて運用継続への懸念は尽きない。
今回は1機の予防着陸に続いて同型の僚機が着陸し、支援のために飛来したもう1機も含めて約5時間15分後までに3機とも離陸した。けが人や民間機の運航への影響はなかった。整備員と思われる米軍関係者が、トラブル機の左エンジン周辺で作業している姿が確認されている。
奄美空港には昨年9月14日と同21日に相次いで米海兵隊オスプレイの緊急着陸があった。県内の民間空港が米軍基地の補助的な役割を担う状況は、着々と日常化しつつある。
トラブル内容について地元自治体に十分な説明もないまま空港使用の既成事実化が進めば、住民の不信が高まるのは必至だ。米軍と自治体との橋渡し役となる九州防衛局は、地元感情に十分目配りして情報収集と公開に努めてほしい。県など自治体側も、住民の代弁者として役割を果たす必要がある。
沖縄県の与那国駐屯地では先月27日、米軍との共同統合演習に参加していた陸自オスプレイが離陸の際に左翼下部を地面と接触させる事故があった。陸自設置の事故調査委員会は、パイロットが離陸のために一時的にエンジン出力を増幅する機能を作動し忘れたことが原因との調査結果を公表した。
事故時のニュース映像は、浮上しようとした機体がバランスを崩し、大きく左右に揺れる様子を記録している。姿勢制御を失って横向きに回転する寸前に見え、乗員16人は切迫した危険にさらされたと言える。
屋久島沖に墜落した空軍機も、横向きに回転して海面に激突したとの目撃証言があった。米空軍の事故調査報告書はギアボックスの破損と人的ミスの双方を指摘したが、根本的な原因は明らかにされていない。
構造上の問題が残されているのか、乗員の練度不足のまま運用されているのか、あるいはその両方なのか。米軍や日本政府は「安全性に問題はない」といった説明を繰り返すが、日々、飛行する機体を見上げる住民の安心は程遠いことを理解すべきである。