社説

[鳥インフル確認]警戒強化し封じ込めを

2025年11月21日 付

 出水市高尾野の養鶏場で死んだり弱ったりしている鶏が見つかり、遺伝子検査で高病原性鳥インフルエンザの陽性がきのう確認された。九州・沖縄で今季初の事例である。
 同じ農場で飼養されている採卵鶏約12万羽の殺処分が始まった。この農場から半径10キロ以内にある89農場、計約501万羽の鶏や卵は、移動や搬出が制限される。
 今季の全国の養鶏場での鳥インフルは、過去最も早い10月17日に北海道で確認された。11月20日朝時点で8道県で10例発生し、殺処分対象は約121万羽に上る。過去最多26道県84例を数えた2022年季に匹敵するペースで増加中だ。
 県内の養鶏農家は細心の注意を払ってきたはずだが、侵入を防ぎきれなかった。5季連続の発生で落胆もあろうが、自治体や農協などと情報交換を密にして警戒を一層強化し、封じ込めに万全を尽くしてほしい。
 ウイルス侵入を防ぐには、農場や鶏舎の衛生管理が欠かせない。鶏舎や防鳥ネットの破損や隙間を見つけたら速やかに修理する。除糞ベルトや集卵ベルトなどの開口部にカバーやシャッターを設置する。以前から知られている野生動物の侵入防止の基本を徹底する必要がある。
 今回の高尾野の鶏舎は開放型だったが、窓のないウインドレス型でも発生の前例はある。空気取り込み口からの粉じんや羽毛の侵入にも細心の注意を払わねばならない。
 農林水産省が6日に都道府県知事に出した通知によると、今季も過去に発生が確認された農場での発生が複数報告されているという。高尾野の鶏舎も2年前に発生例がある。渡り鳥のルートとの関係など多様な環境要因を想定し、重点的な対策強化が求められる。
 22~23年は殺処分した鶏の埋却地近くのため池に消石灰混じりの液体が漏出し、周辺集落に悪臭を放った。池の水を抜いたり埋め替えたりなど、大規模な作業が必要になった。
 1カ所に大量埋却すれば、同じようなことが再発する可能性が消えない。発生農場から埋却地まで遠ければ、運搬経路周辺で感染拡大の懸念も高まろう。分散飼養を進めるとともに、国や自治体は焼却処分など埋却以外の方法も研究してもらいたい。
 農水省の畜産統計によると24年2月現在、県内ではブロイラー約3200万羽、採卵鶏約1020万羽が飼われ、合わせて全国1位だ。
 一般の県民も農家や行政の防疫対策と無関係ではない。農場周辺での野生生物への安易な餌やりはリスクを高める。衰弱した野鳥を見つけたら決して素手で触らず行政に届けるなど、基本的な知識を学んで地域の基幹産業の危機を乗り切りたい。

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