小中学校や小中一貫の義務教育学校で、特別支援学級(支援級)に在籍する児童生徒が大幅に増えている。鹿児島県内でも本年度は9442人と「特別支援教育」が本格導入された2007年度の7.3倍に上る。
支援級の増加は保護者の間で発達障害など子どもの障害への認知が進み、専門教育の効果に理解が進んできた表れと言える。他方、大幅な増加は教員不足の一因になっている。多忙が指摘される教員の業務を見直し、子どもと向き合える環境づくりを急がなければならない。
支援級の増加は、国内外で障害を持つ児童生徒も公平に教育を受ける権利が認識され、07年度に改正学校教育法が施行されたことが契機となった。教育環境が整うに連れて障害に対する保護者の認知度が高まったことに加え、医学の進歩で診断が進んだことも増加の理由と考えられる。
鹿児島県は療育手帳の交付者が九州で2番目に多く、就学前に児童発達支援事業所で手厚い療育を経験し、その重要性を理解する家族が増えている背景もある。歯止めがかからない少子化の影響で、県内では15年度から本年度までの10年間で義務教育学校を含む小学校は児童数が6029人、学級数は405減ったが、支援級は4849人、858学級も増加した。
こうした需要の高まりに対し、県教委では年間に数回の調査をし、年度初めには学校の設置者である各市町村が求める教員数を確保。より障害の重い児童生徒のための特別支援学校の新設にも努めている。しかし、支援級は児童生徒8人に1人の担任を置くことが定められている。年度途中で産休や病欠などで休職者が出て、対応に苦慮する現場は多い。
県内で今後、大きな課題となるのが教員の大量退職問題だ。50代に偏った人員構成となっており、対応が遅れると教育現場に支障が出かねない。限られた期間内に、支援級で学びたいという要望に応えるための対策と教員の専門性を高め教育の質を向上させる知恵と工夫が求められる。
対応の一つとして考えられるのが、教員が抱える業務の洗い出しと見直しだ。教育現場でも導入が進む情報通信技術(ICT)を活用した事務作業の軽減化は有効な手だてである。
子育ての観点で保護者や地域と役割分担ができないかを話し合うことも必要となろう。学校でなければできないこと、家庭や地域に担ってもらえることなどを丁寧に再点検し、協力を求めていくことが労務の負担軽減になり、子どもたちと向き合う時間の増加にもつながる。さまざまな事情を抱えた子どもたち一人一人がよりよい教育を受けられる環境のため、理解と協力を得られる連携が大切になる。