続く失敗に衝撃は大きい。宇宙航空研究開発機構(JAXA)がおととい、南種子町の種子島宇宙センターで行った小型固体燃料ロケット「イプシロンS」の2段目エンジン燃焼試験で爆発が起き、火災が発生した。
昨年7月、能代ロケット実験場(秋田県)の試験でも爆発。その事故を踏まえて対策を取ったはずだ。
問題はどこにあったのか。究明を急がなければならない。政府は、イプシロンSを大型液体燃料ロケット「H3」と共に、次世代の基幹ロケットの両輪に据える。世界で高まる打ち上げ需要に応えていけるのか。日本の国産ロケット開発の正念場と言えそうだ。
試験は約2分間の燃焼を予定していた。しかし点火の20秒後、エンジンを覆うモーターケース(圧力容器)内の燃焼圧力が予測を上回って高くなり始め、49秒後に爆発した。
イプシロンSは、小型衛星を宇宙に運ぶ目的で開発された現行イプシロンのエンジンなどを改良した後継機の位置付けだ。
部品や技術の一部をH3と共通化し効率化を狙う。衛星打ち上げまでの期間の短縮や、低コスト化により、競争力を持てる価格帯を目指している。
ただ、2度にわたるエンジン試験の失敗で先行きは見通せなくなった。2024年度中にベトナムの衛星を載せて初の実証機を打ち上げる計画も、大幅な遅れは避けられまい。
燃焼試験の対象となった2段目エンジンが従来型と異なる点は、点火装置と燃料という。前回爆発の原因に挙がった点火装置には今回、断熱加工などの対策が施されていた。
とすれば、燃料の製造方法や品質管理に問題があったのでは、と指摘する航空宇宙工学の専門家もいる。JAXAの関係者は「これから200項目のデータを詳細に評価する」としている。時間はかかるだろうが、徹底的な再点検で再発防止を図らない限り、日本の技術力への信頼は取り戻せない。
近年、衛星の利用が天気予報や農業、位置システムなどに広がり、宇宙関連ビジネスは拡大の一途をたどる。打ち上げに使うロケットが足りず、各国が参入。日本のイプシロンSも期待が高まるロケットの一つだが、欧米や中国などに大きく先を越されている。差を埋めるには、政府と民間事業者との連携も鍵となろう。
ただし、宇宙利用拡大はビジネスにとどまらない。国は官民一体で防衛目的での利用も広げようとしている。昨年、岸田政権下で初の「宇宙安全保障構想」を策定。他国のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)の実効性向上のために情報収集態勢を整備する方針も決めた。日本の宇宙開発の原点に「平和利用」があったことも忘れずにいたい。