自民、公明両党が衆院選で大敗してから初めての臨時国会が始まった。経済対策の裏付けとなる2024年度補正予算案と、政治資金規正法の再改正が論戦の主なテーマに挙がる。
与党は安倍政権以降、「数の力」で強引な政権運営に終始し、国会審議は形骸化していた。だが過半数割れに追い込まれ、予算案や政府提出法案成立には野党の協力が欠かせなくなった。
いまが本来の姿に立ち戻る好機ではないか。与野党がっぷり四つに組んだ議論を重ね、実りある合意につなげてほしい。
自公政権には長年、法案や予算案を国会提出前に与党で審査する仕組みがあり、野党の要求が採り入れられるケースは限られた。
そうした事前審査のあり方も変わらざるを得まい。衆院の計27ポストのうち、衆院選前の3倍に当たる12を野党が押さえた。中でも立憲民主党は、予算委員長や政治改革特別委員長など主要ポストを手に入れた。国会で修正を図る環境が整ったことになる。
選挙が示した民意の影響力は小さくない。世論を意識してか、石破茂首相はきのうの所信表明演説の冒頭、政権運営の基本方針として、他党にも丁寧に意見を聞く姿勢を改めて強調した。
まずは、政治改革を巡る合意形成をどう図るかが、試金石になる。所信表明では「謙虚に、真摯に、誠実に国民と向き合いながら取り組む」と述べ、法整備を含めて年内に結論を出す必要性を示した。
政治資金規正法の再改正に向けては、政策活動費の廃止、政治資金に関する必要な監査を行う第三者機関の設置を打ち出した。しかし国民民主党以外の野党が「本丸」と位置づける企業・団体献金の禁止には踏み込まなかった。今後の与野党協議の焦点になろう。
そもそもわずか半年前の法改正は、先送り、抜け道だらけの“欠陥法”と野党に批判されながら自民1強体制下で押し切った。今回はそうは行かない。立憲は幅広い野党での改正案共同提出の方針で、開かれた場での「熟議と公開」を求めている。難交渉は必至だが、与野党伯仲時代の新しい議論がどう着地するか、国民は注視している。
一方、物価高対応をはじめとする経済対策の関係経費などを計上した13兆9433億円の補正予算案は、巨額の規模が疑問視されている。総花的で焦点が定まっていない。自公両党が多数形成を図ろうと国民民主の要求を受け入れたことが、要因の一つだ。年収「103万円の壁」引き上げや、ガソリン減税を今後検討することになった。
日本に放漫財政を続ける余裕があるのか。臨時国会で徹底審議が必要だろう。もはや財源確保を与党に丸投げは許されない。野党の責任もより重くなることを肝に銘じるべきだ。