健康保険証は新規の発行が停止された。今後、医療機関を受診する際はマイナ保険証、既存の健康保険証、「資格確認書」のうちいずれかを示す。
発行済みの健康保険証は、有効期限内であれば来年12月1日まで使え、これまで通り医療を受けられる。マイナ保険証を持たない人には期限までに保険証の代わりとなる資格確認書が届く。「保険証が使えない」といった誤解や早とちりがないよう国や自治体、関係機関は代替手段の周知と説明に努めてほしい。
マイナ保険証はマイナカードを取得し、利用登録して使う。医療機関や薬局の窓口で読み取り機にかざし、顔認証か暗証番号入力で本人確認する。
マイナカードを持たない人やマイナ保険証の利用登録をしていない人には、自治体や勤務先の健康保険組合から資格確認書が届く。申請は不要で最長5年使え、更新もできる。
資格確認書と名称が似ている「資格情報のお知らせ」が届く人もいる。機器の不具合などでマイナ保険証が読み取れない時に提示するもので、単独では使えないので注意が必要だ。
政府はマイナカードの普及を目指し、2022年秋に健康保険証の廃止とマイナ保険証への一本化を打ち出した。マイナンバーカード取得者に最大2万円分のポイントを付与する「マイナポイント事業」の効果もあり、10月の全人口に占めるマイナカード保有者は75.7%。うちマイナ保険証の利用登録を済ませた人は82.0%に上る。
だが医療機関や薬局でのマイナ保険証の利用率は16%足らずと低迷する。マイナ保険証に別人の情報がひも付けられるミスが相次ぎ、不信感を呼んだことが尾を引いているからだろう。読み取り端末の不具合も続出している。鹿児島県内でも停電で機器が使えなくなるといったトラブルがある。
どの健康保険証を使えばいいか戸惑ったり、マイナ保険証を登録していても認証の操作が不慣れだったりして受診をためらうようなことがあってはならない。移行に当たっては、医療機関も丁寧に説明を尽くしてほしい。
マイナ保険証は、患者が同意すれば医師らが受診歴や薬の処方歴などを閲覧できる。政府は、過剰な投薬の防止など適切な治療につながる利点があると説明している。また患者が負担する医療費が高額になった場合の高額療養費制度は、これまで必要だった申請手続きをせずに支援を受けられるようになり、便利な面はある。
高齢者や障害者などマイナカード取得や顔認証などが必要なマイナ保険証の利用が難しい人も多い。無理に一本化を推し進め、不便が生じる人がいるとしたら本末転倒だ。平将明デジタル相は「誰一人取り残さない」というが、不安は解消していない。