鹿児島県が、「魅力ある県立短期大学づくり」を目指す検討委員会を設置し、協議を進めている。5回の会議を通して現状の学科の在り方や独立行政法人化の導入などを検討する。
将来の鹿児島を支える人材育成の場として時代の要請に対応した教育内容の充実などを探る目的で、5月末にスタートした。現状を把握するため、県内の高校生や進路指導担当者、企業などを対象にアンケートも実施した。
公立の高等教育機関としてどんな形がふさわしいか、従来の枠にとらわれない幅広い視野の議論が求められる。
県内の57高校で学ぶ2年生に対し実施したアンケートでは、進学希望者4297人のうち、県短大希望者は116人にとどまった。進路指導担当者102人への調査でも半数を超える54人が「進路先に県短大を薦めていない」と回答した。少子化はさらに進むことが見込まれる中、何らかのてこ入れが迫られているのは言うまでもない。
全国の18歳人口は1992年以降、減少傾向に歯止めがかからない。一方、女性の社会進出で4年制大学の人気が高まっており、少子化が進んでも進学率は伸びている。あおりは短大が大きく受けており、全国の学生数はピーク時に比べ2023年度は約15%まで落ち込んだ。
こうした状況を踏まえ、全国で公立大学・短大の再編が進んでいる。学校基本調査によると、1996年度に63校あった公立短大は、2022年度は14校まで減少した。一方で地域の活性化に寄与する高等教育機関を目指し、検討を重ねて再編し効果を上げている自治体もある。参考にしたい。
秋田県では2000年代初頭にかけ、農学系と工学系の2学部で構成する秋田県立大学とグローバルリーダーの育成を目指す単科の国際教養大学を開校した。県立大は県の施策に合致した研究や教育を志し、企業と学生が一緒に課題解決に取り組む。国際教養大は、少数精鋭の教育を実践し卒業生は世界各地で活躍する。その魅力に全国から学生が集まっており、秋田県の活性化や小中高校教育にも寄与する。
鹿児島県は(1)入学者の9割以上が県内出身者(2)卒業生の8割が県内に就職-などを根拠に「県短は若者の県内定着に極めて高い貢献をしている」と現状体制を維持する姿勢を貫いてきた。実際に県内の短大進学率は全国平均より高い。
他方、2023年の総務省の人口移動報告では、県外に人口が流出する「転出超過」が鹿児島県は2752人に上り、うち4分の3は女性が占めた。女性の4年制大学進学率は全国平均を大きく下回るというデータもある。こうした数字と、長く同じ体制を貫く県立短大の在り方は関係ないのか。県の将来設計を念頭に検討が必要である。