政府が提出した2024年度補正予算案の修正案が衆院を通過し、今臨時国会で成立する公算が大きくなった。
与党の自民、公明両党が衆院過半数に届いていない新たな状況下で、補正予算の速やかな成立を図れるかは注目の一つだった。まずは最初のハードルを越えたと言える。
ただ、膨張のタガが外れたままなのは懸念材料だ。行政監視の使命を担う国会が、厳格に精査できるようにすべきだ。審議の時間的余裕を確保し、チェックに資する情報を野党にも共有する仕組みが必要だろう。与野党伯仲下の熟議の在り方を探らねばならない。
補正予算は石破政権で初の総合経済対策の財源となる。低所得世帯向けの給付金、ガソリン料金を抑える補助金など含めた総額13兆9433億円。東日本大震災の発生直後に当たる11年度の計約17兆2000億円に近い額が果たして妥当かは、疑問視せざるを得ない。
財政法は、補正予算を「特に緊要となった経費」と定める。緊急性のある施策に限定されるのが筋だろう。だが石破茂首相は今回、10月の衆院選のさなか、昨年度を上回る補正の編成を打ち上げた。財政規律を軽んじ、選挙目当ての“公約”ありきの規模と言われても仕方あるまい。
立憲民主党は、宇宙戦略基金などへの支出は緊急性を欠くとして、約1兆3600億円の削減を柱とした修正案を提出した。
これに自民が応じる。立民案にあった「能登半島の復旧・復興費を増額する」という主張部分を取り込む形で、能登復興予算を1000億円増額する対案を出してきた。立民は一部要求が通ったと受け止め、採決に応じた。衆院によると、予算案修正は約28年ぶりという異例の対応だった。
野党では国民民主党の動きからも目が離せなかった。
年収103万円を超えると所得税が生じる「103万円の壁」を巡り、自民、公明両党に迫った。最終的には「178万円」を目指し、来年から引き上げると明記した合意書を3党間で交わすことにこぎつけた。併せて、かねてから求めていたガソリン税暫定税率の廃止でも一致したことから、補正予算案への賛成を表明した。
看板政策を掲げて強硬姿勢を崩さない国民民主に、与党側が譲歩した格好だ。野党協力がなければ法案も予算案も可決できない少数与党による政権運営の現実を見せつけた。
来夏の参院選を見据え、与野党ともに成果を示したいという焦りがあるに違いない。だが膨れ上がった予算にメスを入れる作業を後回しにしていいはずはない。補正予算執行のずさんな実態については会計検査院も警告している。言論の府である国会が、もっと真剣に問わなければならない。