社説

[離島航路の欠航]島民生活正常化急いで

2025年12月17日 付

 鹿児島と屋久島を直通で結ぶ「フェリー屋久島2」(3392トン)の欠航が2カ月以上続いている。屋久島では生鮮食品を中心に供給が減り、宅配便の遅れも深刻だ。年末年始を控え、島民の暮らしや産業を少しでも早く正常化させたい。
 運航する折田汽船(鹿児島市)によると、エンジン機器のトラブルが原因で、修理に必要な部品が受注生産のため時間を要している。再開の見通しは立っていないという。
 島内では既にパンや乳製品が手に入りにくい、通販商品配達の予定が立たないといった声が上がる。贈答用の需要が本格化した「屋久島ぽんかん」はもちろん、来年2月にはタンカン、ジャガイモの出荷も控え、関係者は基幹産業の維持に不安を募らせる。
 現在物資については種子島経由で鹿児島と屋久島をつなぐ鹿商海運(鹿児島市)の定期便「フェリーはいびすかす」(1798トン)のほか、同社の貨物船「ぶーげんびりあ」(999トン)が週2、3便臨時運航しカバーする。
 さらに折田汽船と同じ市丸グループのコスモライン(鹿児島市)が、年明けから種子島航路のフェリー「プリンセンスわかさ」(1864トン)を週1便、屋久島に回すよう準備に入った。いずれも積載量が限られ、応急措置であることに変わりはない。 
 フェリー屋久島2は昨年5月と9月にもエンジントラブルで数日欠航した。1993年の建造だから老朽化の影響も否定できない。最近は船員不足もあって今年5月には一時運休日を設けた経緯もある。
 屋久島2に限らず、離島航路を支える船舶の維持・更新や人員の確保は年々難しくなっている。全国的に造船所が減り、燃料費や資材は高止まりしている。
 昨年末、十島村営船「フェリーとしま2」(1953トン)が火災を起こし長期欠航となった。三島村営船「フェリーみしま」(1859トン)のほか県内の同業他社が代替輸送に協力したのは記憶に新しい。東京の会社が所有する「あおがしま丸」(460トン)のチャーター運航もあった。
 としま2は村営船で、人や物資の輸送を担う唯一の定期航路だったため、国の補助があり行政も支援しやすかったとされる。県は代替輸送に必要な経費助成として23年度補正予算で4億円余りを計上した。一方、民間事業者で単独航路でもない屋久島2には国の補助はない。
 公営船と同様に住民の生活基盤を支える役割を担っており、何らかの公的支援も検討していいのではないか。離島航路は「海の国道」ともいわれる。鹿児島は28の有人離島に多くの航路を有する離島県だ。実情に沿った安定運航の維持に知恵を絞らねばならない。

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