社説

[能登地震1年]立て直し被災者目線で

2025年1月6日 付

 石川県の能登半島を襲った大地震から1年が過ぎた。元日の地震と津波に加え、9月には記録的な豪雨が追い打ちをかける複合災害となった。
 道路の寸断で救援まで時間がかかった上、厳寒期に停電や断水が続き被災者は過酷な避難生活を強いられた。犠牲者のうち災害関連死は270人を超え、地震による直接死を上回った。
 今も多くの被災者が不自由な暮らしを強いられている。もともと高齢化率が高く、インフラ復旧の遅れが人口減を加速させる懸念が強まる。地域の将来像が見えない中、孤立を防ぎ、暮らしを立て直す被災者目線の支援が急がれる。
 昨年の元日夕方に発生した地震は、最大震度7を観測し、石川、富山、新潟県の広い範囲が強い揺れに襲われた。東日本大震災以来の大津波警報が発令され、津波が発生。海岸が隆起し、地形が変わってしまった場所も多い。
 9月の豪雨でも浸水や土砂崩れが起きた。住宅や道路など復旧作業がより遅れる要因となった。
 震災の死者は500人を超える。うち発生直後の建物崩壊などでは助かったのに、生活環境の変化で心身に負荷が生じ亡くなるのが災害関連死だ。石川県では、電気・水道途絶の影響が疑われる関連死が目立った。
 県は、劣悪な避難所の環境や不十分な医療提供体制を理由に、被災者を地元から離れた地域へ移す「2次避難」を推進した。最大5000人超が能登から100キロ以上離れた石川県南部や隣県などの宿泊施設に身を寄せた。だが、広域避難などによる長時間の移動や悪路が負担となって死亡したケースも目立ち、教訓とするべきだろう。
 共同通信が先月実施した被災者アンケートでは、復旧や復興が進んでいないと答えた人は6割に上った。倒壊した家屋などの公費解体は、自治体の当初想定を大きく上回る3万3000棟以上の申請があった。昨年末時点でも6割が損壊したまま残る見通しだ。
 住宅確保は最優先の課題である。石川県が地震の被災者向けに整備した仮設住宅は先月約6900戸が完成した。だが豪雨の被災者向けの仮設は今年3月までかかる見通しだ。仮設住宅の入居は原則2年間だが、被災者が安心できる住まいが得られるまで柔軟な対応が求められる。
 地元を離れる人が相次ぎ、コミュニティーの支え合いが失われる不安もある。住民の心身のケアへ、官民の目配りが必要だ。
 土砂崩れなどで交通網が寸断され、支援物資が届かないといった孤立リスクは、半島や中山間地を抱える鹿児島県にとっても共通の課題として意識が高まった。想定を超える災害も念頭に、備蓄や避難所の環境改善といった対策に取り組む姿勢が欠かせない。

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