日米地位協定に関して、47都道府県の7割が改定を望んでいることが共同通信の調査で分かった。改定が不要との回答はなく、鹿児島など26都道府県が「改定が必要」、7県が「どちらかといえば必要」と答えた。
残り14県も「協定で生じる影響には対応を講じるべきだ」、「住民生活に直結する重大な問題」などの問題意識を示した。
昨年10月に就任した石破茂首相は、自民党総裁選では改定に意欲を見せていた。ところが首相の座についてからは主張を封印している。在日米軍に認めた法的特権に、ほとんどの自治体が納得していない状況は理解しているはずだ。これを放置したままで日米同盟を深化できるとは思えない。
改定を望んだ33都道府県のうち、21府県には米軍専用施設がない。基地が集中する沖縄県で頻発する米軍がらみのトラブルや性暴力事件が、米軍と直接関係のない都道府県にも不安を広げているとみて間違いあるまい。地位協定については、米軍機の墜落時を含めて日本側の捜査が制限されるなど、数々の問題が過去に露呈している。
鹿児島県などは米軍機の低空飛行の実態に懸念を示した。鹿児島市や奄美市などで軍用機とみられる低空飛行の情報が多い。県によると2023年度は住民が目撃した205件のうち200件、24年4~6月は全81件が米軍機とみられる。目撃した全ての住民が自治体に問い合わせるわけでもないだろう。米軍機は日常的に県民の頭上を飛んでいると言ってよさそうだ。
日本の航空法は、航空機の最低安全高度を人口・家屋密集地域では最も高い障害物から300メートル、その他の地域では150メートルと定めている。地位協定により米軍には適用されないものの、1999年1月の日米合同委員会で、日本の航空法と同じ高度基準を米軍機にも適用すると確認した。この「約束」をほごにしたような実態が、各地で目撃されている。
米軍機の飛行訓練経路「オレンジルート」下の徳島県南部では、2024年11月、ジェット機の低空飛行に驚いた高齢女性が転倒してけがを負った。レーダー探知を避けて谷あいをぬうように飛行する実戦的な訓練だったと推測される。馬毛島での米軍艦載機の訓練が始まれば、鹿児島県内に新たな訓練経路が設定される可能性もある。
塩田康一知事は先週の定例会見で「航空法の多くが適用されない部分も含めて見直してほしい」と地位協定改定に前向きの姿勢を示した。外交と国防は国の専管事項とされるが、知事には県民の安心と安全な日常の暮らしを守る責務がある。南西諸島は緊迫化する安全保障環境の最前線とされる。地元自治体のリーダーとして、とことん住民の側に立ってほしい。