社説

[独居高齢者増加]地域で支える仕組みを

2025年1月28日 付

 1人で暮らす高齢者が増えている。子どもの独立、配偶者との死別、未婚を選ぶ人の増加など理由はさまざまだ。身近に支える身寄りのない高齢者は多くなると見込まれる。
 2050年時点で65歳以上の1人暮らしの割合は、32道府県で全世帯の20%を上回る。鹿児島県は4番目に高い24.8%となっている。
 高齢になると賃貸住宅を借りにくい、病気の際の支援や死後の家財処分などを頼める人がいない、などの事態が生じる。安心して暮らすには、日常生活の援助や身元保証など多岐にわたるサービスが必要だ。行政が中心となって地域、民間と連携し、支える仕組みの構築が求められている。
 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、50年時点で高齢者が1人で暮らす割合は地方を中心に高くなる。65歳以上の1人暮らしは全国で20年の13.2%から50年に20.6%に上昇する。
 医療や介護、福祉の制度があっても、その挟間ともいえる困りごとは少なくない。居住面では、住宅を借りようとしても大家が敬遠するケースがある。認知症などで支払いが滞る懸念や孤独死、残された家財の処分なども問題となるからだ。
 身寄りのない人が入居しやすくするため、家賃債務の保証や見守りを担う居住支援法人の制度がある。県内でも指定を受けてサポートするNPO法人がある。行政と不動産、福祉団体による居住支援協議会を設立する動きもあり、霧島市や鹿児島市で発足した。貸す側の不安を軽減する取り組みで、自治体ごとの設置が期待される。
 入院時の不都合も生じやすい。医師法で身元保証人がいないことを理由に入院を拒むことはできないが、実際は医療費支払いや死後の対応を懸念して受け入れたがらない医療機関があるためだ。
 身元保証や死後の手続きを担う民間の事業者は増えている。ただ「高齢者が内容を理解しないまま高額な契約をした」など消費者トラブルも報告されており、質の担保が課題だ。
 各地の自治体で対策が進む。高齢者からの遺贈を受けない、といった要件を満たす事業者を独自に認証する制度や、低所得の高齢者向けの自治体職員による見守りや葬儀手続きを含む支援事業などだ。県内では地元の社会福祉協議会や地域包括支援センターが関与する例がある。
 家族、親族の支援が当たり前という考え方はもう通用しない。課題は多方面にまたがり、介護や社協の職員がボランティアで対応してきた面もある。高齢者を見守る民生委員の不足を補う手だても欠かせない。一人一人の状況の把握と自治体各部署と地域、民間の情報共有がかぎとなりそうだ。

日間ランキング >