社説

[森友文書]国は開示に動くべきだ

2025年2月5日 付

 森友学園への国有地売却を巡る財務省決裁文書改ざん問題について、肝心な点は何も明らかになっていない。自殺した元近畿財務局職員の妻、赤木雅子さんの「真相を知りたい」という願いに、国は誠実に応えるべきだ。
 雅子さんは財務省に関連文書を情報公開請求するが、文書の存在も明らかにせず拒まれ、司法に「不開示決定」取り消しを訴えた。2023年9月の一審大阪地裁判決は棄却。控訴審で先月末、大阪高裁が不開示決定を違法として逆転勝訴判決を出した。
 開示まで命じたものではなく、国は改めて是非を判断するが、迅速に動いてもらいたい。公文書改ざん・廃棄は国民への重大な背信行為だ。財務省の内部調査のみで逃げ切るのか。遺族だけでなく、国民にも真相を知らせる検証責任がある。
 対象の文書は、改ざんを指示したとされる佐川宣寿元国税庁長官らが告発され、財務省が検察に任意提出したものだ。あるか否かの存否自体を回答せず不開示とした決定について、財務省側は「存否を回答すると文書を任意提出した状況が明らかになり、将来の捜査に支障を及ぼす」と説明した。
 確かに、情報公開法には、このような「存否応答拒否」ができる規定がある。一審大阪地裁は同規定の適用を妥当と認め、国の主張を支持した。
 一方、今回の高裁判決は、まず存否応答拒否を法の「例外的な取り扱い」と位置づけた。文書の存在を明らかにした上で、開示・不開示の決定をすることが情報公開法の原則だと指摘。規定の乱用で必要な情報が開示されないことへの危機感の表れと言っていい。
 さらに、決裁文書改ざん問題で刑事告発された各事件は既に不起訴とされ捜査が終結しており、文書存否を答えても「捜査に支障があるとはいえない」とした。財務省の決定は情報公開法の要件を欠いて違法だと結論付けた。
 存否応答拒否のできる例外ケースには当たらないとの判断は、雅子さんと弁護団にとって一歩前進といえよう。
 鹿児島県警の公文書開示を巡っても、県警が存否を明らかにせず不開示とした決定を昨年、県公安委員会が「妥当ではなく、改めて開示、不開示を決定すべき」と取り消した。対象となったのは、懲戒処分などを受けた職員が捜査対象となった事案の事件記録である。あらゆる行政機関にとって、存否応答拒否はあくまで慎重に例外的にすべきとの教訓にしなければならない。
 石破茂首相は5年前の自民党総裁選で森友問題を再調査する必要性を説いていた。もし新たな文書が開示されれば、改ざんの動機、具体的な指示系統、政権中枢との関わりなどについての手がかりが得られるかもしれない。国会が真相解明に取り組む姿勢を見せる時だ。

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