組織一丸となって気を引き締め、信頼回復に取り組んでいたのではなかったのか。鹿児島県警でまたしても信じ難い不祥事が発覚した。
不同意性交の疑いで、県警本部捜査2課長が書類送検された。2018年に警察庁に入庁し、23年8月から県警に出向していた28歳のキャリア官僚である。書類送検と同じ日、警務部付に更迭された。
先月、警察庁のセクシュアル・ハラスメント相談窓口に女性からメールで「2課長から昨年11月に不同意性交の被害を受けた」と相談があった。双方の言い分には食い違う部分があるという。
県警では20年以降、不同意わいせつや盗撮など性犯罪関連で計5人が逮捕されている。24年5月には前生活安全部長が国家公務員法(守秘義務)違反容疑で逮捕された。当時の本部長にも隠蔽(いんぺい)などの疑いが向けられ、県民からの信頼は大きく傷ついている。
県警が昨年8月に再発防止策を打ち出し、改革推進委員会を新設するなどしたのは、不祥事を根絶する強い意志の表れだったはずだ。そんな最中に幹部が性的暴行容疑で捜査の対象になるとは、理解に苦しむ。緊張感や危機認識が組織内で共有されているのか、疑わざるを得ない。
使命感を持って現場に臨んでいる多くの警察官は、職務の名誉も信頼も傷つく状況に心を痛めているはずだ。さらに、鹿児島のイメージを甚だしく毀損(きそん)している。暮らしの安心安全のよりどころである警察組織の統治不全が疑われ、警察官が信用できない地域社会が魅力的と言えるだろうか。
しかも性犯罪が相次ぐのはどうしたことか。昨年9月の県議会では、県議から「警察官が持つ特権意識が安易に性犯罪を起こさせるのでは」との指摘があった。県警の不祥事再発防止策に対しては、当初から県議や市民団体が性暴力関連の取り組みが不十分と批判している。再発防止策の再検討を求めたい。
県民は県警の対応に厳しい目を向けている。秘密主義や身内への甘さが疑われたりすれば、信頼回復はさらに遠のく。2課長の事案は、被害者の人権に配慮した上で捜査結果を公表する必要がある。さらに本部長が今の状況をどう受け止め、今後どう取り組むのか自分の言葉で率直に語り、信頼を再構築する決意を改めて示してほしい。
県議会は県警不祥事を巡る調査特別委員会(百条委員会)の設置を昨年から論議しているが、実現していない。鹿児島県議会で百条委の設置は前例がないが、県警が前例のない状況に陥っている現実が存在する。性暴力軽視や隠蔽体質を疑う声を受け止めて、県議会の持ちうる力を最大限に発揮してもらいたい。