2024年の荒茶の生産量で鹿児島県が静岡県を上回り、統計が残る1959年以降で初めて首位になった。後発の産地として、生産量の拡大に努めてきた関係者の悲願が実った。
全国茶品評会で鹿児島は21年連続の産地賞を獲得し、品質は高く評価されている。長年の課題であるブランド力の向上へ弾みがつきそうだ。
鹿児島茶は生産の機械化による低コスト化を進め、ペットボトル飲料向けなど多様な需要にも対応してきた。近年は海外での抹茶ブームが追い風となっている。時代のニーズをとらえ、茶産地としての地位を確立してほしい。
荒茶は、収穫した茶葉(生葉)に乾燥などの加工処理を加えたものだ。店頭などで販売される仕上げ茶の原料に当たる。
24年の鹿児島の生産量はペットボトル茶など飲料原料向けが好調で、前年比3%増の2万7000トンだった。急須で入れるリーフ茶が多い静岡は5%減の2万5800トンだった。
静岡県は生産者の高齢化などの影響を受け、1975年をピークに生産量が減少傾向だった。静岡に比べ平たんな農地が多い鹿児島は、機械化や大規模化を進め、維持拡大してきた。2023年産の差は、過去最少の1100トンに縮まっていた。
屈指の産地となりながら原料供給県にとどまり、静岡や京都に比べ知名度で後れを取ってきた面もある。今後は質、量ともに優れる「日本一の茶どころ」として発信し、いかに付加価値の向上につなげられるかが課題だ。
急須離れや人口減で国内需要は縮小が避けられない。一方、欧米での和食普及や健康志向を背景に輸出が伸びている。鹿児島は海外市場にも目を向け抹茶原料のてん茶生産や有機栽培に力を入れ、安定した生産基盤を培った。安全・安心な茶づくりを掲げ、産地など適正表示や生産履歴の開示、国際認証の取得に取り組んできた生産者、関係者の努力のたまものだ。
23年度の鹿児島の茶輸出額は約32億円と前年度から倍増した。最近は抹茶を使ったドリンクやスイーツの人気が高い。原料のてん茶生産は20年産で京都を抜いて鹿児島が全国一。23年産のシェアは4割近い。
てん茶は一定期間、新芽に覆いをかけて遮光する。煎茶の品種でも作れ、日差しが強い鹿児島はもともと覆いをかける習慣があったため、他産地に比べて転換がスムーズに進んだ。
県も茶を和牛と並ぶ輸出の重要品目に据える。「日本茶」の生産地として、販路構築と収益力のアップに期待がかかる。
日本一は県民にとっても誇らしい。香り豊かでこくのある鹿児島のお茶の良さにあらためて目を向けることが、地元の消費拡大にもつながるだろう。