社説

[修正予算案通過]超党派の合意には遠い

2025年3月6日 付

 政府の2025年度予算案が衆院を通過した。自民、公明の与党と日本維新の会などの賛成多数で可決された。
 少数与党の現実が立ちはだかる。予算成立の可否を握る野党の求めに応じ、与党は29年ぶりの国会修正に踏み切り、最終的に維新を取り込むことに成功した。
 審議では、中長期的な視点に立つ与野党伯仲の熟議に期待した。だが野党の主張は「ばらまき型」の施策が目立つ。夏の参院選を意識した党利争いが透け、一体感を欠いた。一方、譲歩を連発した与党内には不満も出る。石破茂首相が施政方針演説で強調した「党派を超えた合意形成」には程遠い。
 修正された一般会計の歳出(支出)総額は、115兆1978億円に上る。元々の案から3437億円減らしたが、当初予算ベースで過去最大は変わらなかった。膨張一途の予算編成を見直すチャンスだったが残念だ。
 主な変更点の一つは所得税が生じる「壁」の最低ラインを現在の年収103万円から、4段階の所得制限付きで160万円にしたことだ。税を減らす効果のある控除の上乗せにより、1人2万円程度の減税になるという。
 与党は昨年末、いったん123万円に決めたが、国民民主党との協議を経て再検討し引き上げた。その結果、歳入面で6210億円の税収減を見込む。半分近くを基金の取り崩しなどで埋め合わせた。
 一方、歳出面では自民、公明、維新の3党合意を踏まえた高校授業料無償化に関し、1064億円を追加計上した。年収要件をなくした上で、全世帯に一律額を支給する費用だ。私立支援の所得制限を撤廃する26年度からは年5000億円超が必要となる見通しという。恒久財源の確保が課題となる。
 国債残高は1000兆円を超えてなお増え続けている。金利上昇で借金の負担が増す中、日本に財政健全化への時間的余裕はない。野党も責任を免れないことを忘れてはならない。
 野党第1党の立憲民主党は3兆8000億円規模の修正を掲げ、特に、医療費の支払いを抑える「高額療養費制度」の利用者負担上限引き上げ凍結を目指した。成果は一部見直しにとどまり、参院に持ち越された。
 1月31日に衆院予算委で実質審議入りした予算案を巡っては、自公両党は実務者を中心に立民、維新、国民民主と個別協議に臨んだ。国民に見えないところでの進め方に疑問が残る。修正内容や修正による影響について、公開の質疑をもっと尽くすべきではなかったか。
 きのうから参院での審議に移り、石破政権が24年度内に予算を成立させられるかどうかが焦点になった。日程は窮屈だが、与野党は可能な限りの「熟議と公開」を尽くしてもらいたい。

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