女性の地位向上を目指し、国連が3月8日を「国際女性デー」と提唱して50年になる。この半世紀、日本は他国に比べて男女平等への歩みが鈍い。男女格差の状況を示すジェンダー・ギャップ指数は、特に政治、経済分野の遅れが顕著だ。
依然、男性中心の組織や制度、意識が格差を生み出す。男は長時間労働し、女性が家事や育児をする、といった旧来の分担意識が根強く、力を発揮する機会を得たい人にとって壁になっている。性別役割の偏りが前提となっている社会の仕組みを問い直し、変える契機としなければならない。
国連は国際女性年の1975年に女性デーを定め、国際的な連帯と統一行動を呼びかけた。20世紀初頭に米国などで女性が参政権や労働環境の向上を求めてデモを起こしたことが起源という。日本でも男女雇用機会均等法や「世界の女性の憲法」と言われる女性差別撤廃条約の批准といった法の整備が進んだのは、国連と連動した取り組みがあったからだ。
ジェンダーは、社会的、文化的につくられた性別を指す。さまざまな統計を分析した世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数は1が男女平等、ゼロに近いほど不平等を意味する。
2024年の日本は0.663の118位で、先進7カ国(G7)の中で最低だった。同フォーラムが公表を始めた06年、日本は0.645で79位だった。同レベルだったフランスやイタリアはその後右肩上がりに改善したのに対し、日本は変わらない。結果世界から取り残されているのが実情だ。
政治分野の女性参画は113位と低水準が続く。国会議員の割合や女性閣僚が少ないことが影響している。
昨年の衆院選で女性議員数は過去最多となったが、それでも2割に達していない。候補者や議席の一定数を女性に充てる「クオータ制」などを導入している国もある。日本でも検討し、人材育成に努めるべきだ。
経済分野は管理職や役員が少ないことや、男女の賃金格差が大きいことから120位と沈む。管理職などの意思決定層に女性が少ないのは、仕事と家庭を両立する負担が偏っているのが背景だ。分野を問わない課題といえる。
出産後、昇進を諦めたり、非正規雇用に転じたりするケースがある。働き方は個人の選択だが、長時間労働が評価される人事や配偶者への「家族手当」支給といった制度の下、男性中心の働き方が変わらず、女性を多様な選択肢から遠ざけている現状は否めない。
国際女性デーに本紙含む地方紙と共同通信は、世界経済フォーラムにならった都道府県版の指数も報じている。数字に表れるのは社会の一面ではあるが、一人一人の行動や意識を変えるきっかけとすべきだろう。