社説

[国スポ会期分散]持続可能目指し議論を

2025年3月16日 付

 国民スポーツ大会(旧国民体育大会)の開催地負担の軽減策を検討していた有識者会議は、日本スポーツ協会への提言をまとめた。多くの競技を秋の11日間に集中開催する方式を改め、トップ選手が参加しやすい時期に各競技を分散させる通年開催化が柱だ。
 会期分散によってホテルやバスなど宿泊・輸送需要の集中を避けられる。同じスポーツ施設を複数競技で使えるようになり、新設や改修の抑制にもつながる。運営面の負担を和らげ、持続可能な大会を目指す方策と言える。
 「トップアスリートと地域スポーツの好循環」を大会理念に掲げた。各競技の時期を調整すれば、国際大会が主戦場の五輪選手らの参加を増やせるだろう。「国内最高の総合競技大会」を目指して議論を重ねたい。
 国スポは戦後間もない1946年に始まり、都道府県の持ち回り開催でインフラ整備やスポーツ振興を図ってきた。現在ではその意義が薄れ、人口減少や財政難に直面する開催地にとって多大な労力と経費を伴う数年がかりの準備が重荷になっている。
 中でも開催地の負担が顕在化したのは新型コロナウイルスの感染拡大による2年連続中止である。2020年の鹿児島大会は後続県との調整を経て3年延期。21年の三重大会は仕切り直しとなり、2巡目最後に当たる35年の開催を目指す。いずれも開幕が迫ってからの中止で、苦渋の決断だった。
 会期の分散が実現すれば、非常時に大会全体ではなく一部競技の延期や中止といった対応も選択肢になる。台風や地震など自然災害のリスクに備える意味でも導入は欠かせない。
 日本スポ協はこれまでも、夏と秋に分かれていた大会の一本化や参加者数の削減を進めてきた。それでも課題解消にはつながらず、今回、自治体や経済界などに幅広く意見を求めた経緯がある。提言を重く受け止め、抜本改革を成し遂げなければならない。
 とはいえ、主要な論点である経費面の負担見直しは先送りされた。大会経費は運営費、施設整備費、選手強化費を合わせて数百億円規模になる。このうち運営費について、全国知事会は国と日本スポ協に大幅な負担増を求めているが、実現は見通せない。
 財源確保策としてはチケット販売の拡大や協賛金制度の見直しが示されている。今後の議論で重視すべきなのは、地域活性化や経済面で負担に見合った恩恵があることだろう。新たなプロジェクトチームは国民の理解が得られる仕組みを見いだしてほしい。
 提言は運営をサポートする新組織の設立を求めたほか、複数都道府県での開催、一部競技の開催地を固定する「聖地化」などを提起した。3巡目に入る36年を待たず、可能なものから前倒しで導入を検討すべきだ。

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