ミャンマー中部で28日、マグニチュード(M)7.7の地震が起きた。
軍事政権は29日、死者数1002人、負傷者は2376人と発表。隣国タイや中国でも激しい揺れが確認されており、被害はさらに拡大する恐れが強い。
ミャンマーは2021年2月のクーデターで国軍が実権を握ったが、民主派や少数民族武装勢力が激しい抵抗を続け、内戦状態にある。被災の把握や人命救助が迅速に進むだろうか。人道状況の一層の悪化も心配だ。国境を越えた緊急支援を急がねばならない。
米地質調査所(USGS)の解析によると、震源地はミャンマー第2の都市マンダレーの近く、震源の深さは約10キロ。人口密集地のマンダレーでは建物の崩壊が深刻という。
最大都市ヤンゴンの中心部では建物や道路に目立った被害はなかったものの、余震を心配する声が上がる。
軍事政権は非常事態を宣言。ミンアウンフライン総司令官は「国際援助を歓迎する」と表明した。
国際的孤立を深めるミャンマー軍政は厳しい情報統制を敷き、過去の大災害時には国際機関からの援助を拒んで非難を浴びた。異例と言える支援要請は、独力での危機打開がもはや困難と判断したのだろう。
各国政府から、支援や救助隊派遣などの申し出が相次いでいる。
軍政がこのところ接近を強めていた中国やロシアの動きは早かった。中国国営通信新華社は、政府が医療物資や救助用機材とともに救援隊を派遣したと報じた。ロシア非常事態省は救助隊員ら120人の派遣を発表した。
経済制裁を科す米国も、必要な食料や安全な飲料水などの緊急支援の提供に言及。国連は支援のため、基金から500万ドル(約7億5000万円)を拠出する。
日本は軍政を承認しない姿勢を示そうと昨年、対ミャンマー外交のレベルを格下げした。しかし、地震大国の教訓を生かしてできることは多いはずだ。支援の輪に加わることをためらう時ではあるまい。
今回の地震はタイの首都バンコクでも強く揺れ、建設中のビルが倒壊した。これについて気象庁は、揺れが1往復するのにかかる時間が長い「長周期地震動」の可能性を指摘する。発生場所から遠いところにも伝わりやすく、特に高層ビルは「共振」して大きく長時間揺れ続けることがある。
震源から離れた場所でも特に高層ビル利用者らに注意してほしいと、気象庁は23年2月からこの長周期地震動を緊急地震速報の発表基準に加えた。南海トラフ巨大地震でも被害が懸念される。改めて備えておきたい。さまざまな情報を防災に役立て、命を守る手だてにしなければならない。