違法なオンラインカジノが国内でまん延している。スポーツ選手や芸能人らが賭博容疑で摘発され、スマートフォンなどで手軽にできるギャンブルの深刻な実態が明らかになってきた。
警察庁が実施した初の利用状況調査の推計によると、国内の経験者は約337万人、年間賭け金総額は約1兆2423億円に上る。2024年の摘発者数は279人(暫定値)と過去最多で、前年比2.6倍になった。
新型コロナ禍の外出制限時から急増したとされており、政府の対策が後手に回っているのは明らかだ。サイトへ容易に接続させない仕組みや規制を強化し、歯止めをかける必要がある。
オンラインカジノは、インターネットのサイトで会員登録すれば、現金や暗号資産を賭けてスロットやバカラなどのゲームができる。日本で利用できるサイトの多くは海外でライセンスを取得して運営されているが、国内から金を賭ければ刑法の賭博罪に当たる。
問題視されるのは利用者に違法性の認識が薄いことだ。日本語対応で日本の著名人を広告に起用するなどして合法的に利用できると思わせるものが多い。交流サイト(SNS)などで利用を誘導し、運営側から報酬を得る「アフィリエイター」(広告作成者)が違法行為を助長しているとの指摘もある。
これらの情報が社会に浸透していないのは、警察など関係機関の啓発不足が要因の一つだと言わざるを得ない。
時間や場所を選ばないオンラインのギャンブルは、金銭を賭けている感覚が乏しくなるため依存症につながりやすいとの指摘もある。短期間に多額の借金を抱えることになりかねず、危険性を周知することも重要だ。
民間の調査では、カジノサイトで遊ぶ人は10~30代が多いとされており、低年齢化にも注意を払う必要がある。
状況の改善を狙い、政府は摘発強化を柱とする新たな「ギャンブル依存症対策推進基本計画」を閣議決定した。金を賭けた客のほか、賭け金や配当を仲介して手数料を得る「決済代行業者」やアフィリエイターを取り締まる。
違法性の周知や若者への教育・啓発も一層進める。さらには通信業者に広告表示や紹介サイトの開設禁止など適切な対応を働きかける方針を打ち出しており、着実に実行してもらいたい。
注視すべきは、総務省がカジノサイトへの接続を強制的に遮断する「ブロッキング」導入の可否を検討する考えを示したことだ。プロバイダー(接続業者)が利用者の同意を得ずに全ての接続先を確認する必要がある手法で、本来なら憲法などが定める「通信の秘密」に抵触する行為である。ほかに方法がなくやむを得ない場合には認められるとされるが、プライバシー侵害やネット上に監視の網が広がる懸念も拭えない。慎重な議論を求めたい。