社説

[統合司令部始動]日米軍事一体化を懸念

2025年4月18日 付

 陸海空3自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」が始動した。近年でも例を見ない大幅な組織改編で、米軍との連携向上を図る狙いがある。

 陸海空に加え、サイバー、宇宙、電磁波といった幅広い領域の部隊を指揮する。240人態勢で発足し、1年後には約280人にまで増員される。

 2025年度末の配備開始が想定される反撃能力(敵基地攻撃能力)を持つ長射程ミサイルも運用予定だ。攻撃目標の位置情報などは米軍に頼らざるを得ず、米軍の指揮下に組み込まれるような過度の一体化が加速する懸念は拭えない。

 司令部新設は22年策定の安全保障関連3文書に明記された。軍拡を進める中国、ロシアなどを念頭に進めてきた日米同盟強化の一環だ。

 従来は大規模災害などが起きてから陸海空の統合部隊を臨時編成し、制服組(自衛官)トップの統合幕僚長が部隊運用を担ってきた。常設組織とすることで、即応力を高める目的もある。

 今後、統幕長は防衛相の補佐として主に政治対応、新設の統合司令官は部隊運用に専念する役割分担が進む。部隊の効率化を目指すこと自体は理解できる。

 ただ、政治のコントロールが弱まるようなことがあってはならない。司令部幹部は自衛官を中心に構成され、防衛官僚である背広組(文官)は司令官補佐官1人だけという。民主主義国家の基本である文民統制の原則が機能しているか、厳格な監視が欠かせない。

 自衛隊は米軍とは独立した指揮系統で行動し、憲法や国内法令に従うというのが政府の立場だが、着実に担保する手段があるのか。そもそも反撃能力は専守防衛の国是を形骸化するとの声は根強い。歯止めの議論が必要だ。

 奄美群島を含む南西諸島では自衛隊と米軍との共同訓練も拡大し、着々と実務面の協力が進む。国会などでの開かれた議論に乏しく、地元の不安には応えられていない。

 統合司令部の発足間もなく米政権のヘグセス国防長官が来日。司令部設置に合わせて米側も在日米軍司令部の権限を強化し「統合軍司令部」に再構成する計画を始動したと説明した。

 しかし日米連携のあり方には不透明な部分が多い。トランプ大統領は日米安保条約についてかねて不公平だと不満を示してきた。政府支出削減策の一環として、在日米軍強化の停止を検討しているとも報じられた。関税引き上げを巡るきのうの初交渉では日本の防衛面の負担増に言及したという。

 政府には、毅然(きぜん)と対応してほしい。日本は米に基地を提供し、米側駐留経費の肩代わり(思いやり予算)も厚くしてきた。片や日米地位協定は日本に不利として、不満が募っている。米要求に譲歩一辺倒となるようでは困る。

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