社説

[育児・介護休業法]柔軟な働き方後押しを

2025年4月22日 付

 育児、介護と仕事の両立を支援する改正育児・介護休業法が本年度、段階的に施行される。男女を問わず柔軟な働き方を後押しする仕組みを整える。

 0~2歳に比べて手薄だった3歳以降の子育て支援を手厚くするのが柱だ。介護も休業制度などの周知を企業に義務付け、離職防止を図る。

 両立支援の制度を拡大しても、気兼ねなく利用するには職場の理解が欠かせない。各企業の対応はもちろん、働く一人一人の意識改革が求められている。

 育児・介護休業法は1992年の施行後たびたび改正されてきた。2010年には3歳未満の子どもを持つ従業員が短時間勤務を選べる制度を企業に義務付け。22年からは子どもが生まれる従業員に育休取得の意向を確認しなければいけなくなった。両立支援策を徐々に拡充してきたのは確かだ。

 4月から、残業免除は「3歳になるまで」が「小学校入学前まで」に延長されるなど充実する。全面施行となる10月からは、3歳から就学前の子を養育する労働者がテレワークや時差出勤など複数の選択肢から働き方を選べる制度の導入を、全企業に義務付ける。

 このほか従業員100人超の企業には、男性の育休取得率の目標を設定して公表するよう義務付ける。取得率の実績公表の対象企業は、従業員千人超から「300人超」まで広げる。

 現行法の下で働く人は、原則子どもが1歳になるまで育児休業を取れ、2歳まで延長できる。一方、共働きが増えても、育児負担は女性に偏りがちだ。育児休業の取得率も女性の8割に対し男性は3割にとどまる。政府は民間の男性育休取得率を「30年までに85%」と掲げている。今回の改正による底上げ効果を期待したい。

 介護休業は、介護される家族1人につき93日間を3回まで分割して取得できる。だがこうした制度の利用者は介護をしている従業員の1割程度にとどまるとされる。

 4月からは、介護保険に加入する年齢の40歳になった従業員へ制度を周知し、介護に直面した従業員に休業利用の意向を確認させる。制度を使わないまま離職するような事例に、歯止めを掛けたい。

 子育てや介護をしにくい社会は人口減の加速と、働き手不足を招く。人材獲得競争の中、従業員が制度を利用しやすい職場環境を整備できるかどうかが今後の課題だ。就業規則等の見直しなど具体的な対応が急がれる。

 育児を理由に仕事を抑える人に対し、カバーする同僚らが「子持ち様」とやゆする向きがあるという。人員に余裕のない企業にとって容易ではないが、私生活とバランスの取れる男女対等な働き方を模索するほかない。「お互いさま」の意識づくりがかぎとなる。

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