社説

[企業・団体献金]先延ばしは政治の怠慢

2025年4月27日 付

 巨額の資金が政策決定をゆがめているのではないか。不明朗さがつきまとう企業・団体献金の禁止の是非を巡る各党の溝は埋まらぬまま、「3月末までに結論を出す」としていた与野党合意は先送りされた。
 主張の隔たりが大きいのは分かっていたはずである。そもそも当初目標にしていた昨年末に決着できず、再設定した期限が3月末。年明けから精力的に協議を重ねるべきところを放置した。期限を守るために力を尽くしたとは言い難い。政治の怠慢ではないか。
 自民党と野党第1党の立憲民主は4月18日、トランプ関税などへの対応を優先させ、企業・団体献金の扱いについては大型連休明けに各党協議を再開することで合意した。結論を得る時期は今国会中を目安としているが、見通せていない。
 度重なる「政治とカネ」の問題で政治への不信は高まっている。1995年には政党交付金制度が導入されたことから、献金の存続は交付金との「二重取り」とも批判も受けてきた。
 これ以上先延ばしせず、国民が納得できる抜本的な改革を実行しなければならない。

■禁止、公開、規制…
 自民派閥による裏金事件発覚後、政治改革を求める声が強まり、政治資金規正法は2回改正された。昨年6月はパーティー券購入者名の公開基準額をそれまでの「20万円超」から「5万円超」に引き下げ、12月には政策活動費の全廃や政治資金収支報告書のデータベース化を決めた。
 企業・団体献金については、2024年度内に結論を出すと申し合わせ、年を越した。
 しかし、3月10日に始まった衆院政治改革特別委員会の論戦では、権益を温存したい自民の「公開強化法案」と、立民や日本維新の会など野党5党派の「禁止法案」が真っ向から対立した。
 公明、国民民主両党はどちらにもくみせず、折衷案として献金を存続させた上で規制を強める「規制強化案」を示した。だが法案として提出されたものではなく、結局折り合えずに結論は4月以降に持ち越された。
 自民は、企業・団体献金が「悪ではない」(小泉進次郎前選対委員長)との立場だ。「禁止より公開」を改正の柱に掲げ、献金をした企業・団体名を公開する基準額を「年1000万円超」とする法案を提出した。対象となる党支部は全体の5.6%、金額も6割弱にとどまる。これでは政治改革とは呼べまい。
 立民などの法案は、「金権腐敗や癒着政治の温床になっている」として企業・団体献金を禁止。ただ政治団体経由の献金は認める。上限額を引き下げるなどの制限は強化するものの「抜け穴」との批判は免れまい。丁寧な説明が求められる。
 公国案には自民も実務者協議に応じており、多数派形成の上では今後の軸になる可能性がある。献金存続が前提とはいえ、献金受け取り先を政党本部と都道府県組織に限定するなどの当初案には、他の野党から理解を示す声もあった。
 だが、公国は自民との協議が始まるとすぐ、政治資金収支報告書をオンライン提出すればどの政党支部も献金が受け取れるように「譲歩」した。8000近くある政党支部への献金を温存させる大幅な後退である。
 昨年末、「野党が一致するなら禁止に反対ではない」との姿勢を示していた国民民主が企業献金を温存する側に回ったことに、他の野党から「背信行為」との批判も出ている。

■指導力を示すとき
 現行の規正法は企業や労働組合からの献金について、政治家個人や資金管理団体が受け取ることは禁じるが、政治家が代表を務める政党支部には認めている。
 自民は企業献金の存続に固執するなら、その必要性を正々堂々と語ればいい。立民も「抜け穴」批判に対し、丁寧に反論すべきだ。それこそが熟議の国会ではないだろうか。
 石破茂首相は1月の施政方針演説で「政治改革の課題について結論を得るのは政治家の使命だ」と訴えた。
 政党交付金や企業・団体献金、個人による寄付で構成される収入と、政治活動の支出について「バランスはどうあるべきか」と提起。「国費の助成を受け、原則として非課税の特別扱いを受ける以上、それにふさわしい政党や政治団体としての規律の在り方をどう考えるか」と問題意識も語った。
 その通常国会中に自らが自民の新人議員15人に1人当たり10万円の商品券を配り、世間の感覚とのずれを露呈した。謝罪を繰り返したものの、献金問題については人ごとのようだ。
 政治不信を加速させた張本人である。抜本的な改革に踏み込まない限り、政治への信頼は回復しないと肝に銘じて、指導力を発揮してもらいたい。

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