社説

[新社会人へ]成長焦らずに一歩ずつ

2025年5月1日 付

 この春、社会人としてスタートを切った皆さん。新生活もちょうど1カ月が過ぎたところですね。

 緊張で張り詰めた日々だったかもしれません。希望通りの職場で充実感を感じている人もいれば、今後やっていけるか、不安な人もいるかもしれない。でも成長を焦る必要はありません。

 いま、さまざまなことが予想もつかない展開を見せ、前例にとらわれない発想や活力が求められています。挑戦し挫折もし、一歩ずつ進んでください。仕事を通して誰かの役に立つ。それが使命感を生み、喜びとなる。そんな経験を重ねられるよう願っています。

 人手不足を背景に学生優位の売り手市場は続いています。今春卒業予定だった大学生の内定率は、2月時点で92.6%。厚生労働省などによると、前年より1.0ポイント増え、同時点としては調査開始以降、最も高い数字でした。

 インターンシップ(就業体験)で得た学生の情報を、企業が選考に活用できるようになったのも今回からです。体験参加者を対象に早期選考を行う企業が多く、就職活動の前倒しに拍車がかかったとも言えるでしょう。

 こんな時代に迎えられた2025年度新入社員を人事労務のシンクタンク・産労総合研究所は「新紙幣タイプ」と名付けました。昨夏発行された新紙幣は偽造防止などの最新技術を誇る一方、導入には設備や投資が必要です。

 これになぞらえ、ITリテラシー(情報を理解・活用する能力)に優れていると同時に、失敗を恐れる意識が強いとされる新人の受け入れには、コミュニケーションや育成のやり方をこれまでと変えることを促しています。そうすることで、企業や組織に変化が呼び込まれる可能性を指摘しました。

 言うまでもなく企業側も人材育成を模索しているでしょう。離職率の高さは深刻です。21年春に就職した大卒者のうち3年以内に辞めた割合は前年比2.6ポイント増の約35%。3年連続の上昇でした。何とかつなぎとめ、共に働き続けてほしいと思っているはず。ですから新人の皆さんは「一人」ではないのです。悩みがあれば先輩や仲間を頼り相談して解決策を探ってください。

 経済産業省は多様な人々と仕事をしていくために重視すべき「社会人基礎力」として、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の三つを提唱しています。それぞれの現場でぜひ参考にしてほしいと思います。

 最後に、企業に向けて提案を。栄養バランスのとれた食生活は、心身の健康を支えます。若者の野菜不足や朝食の欠食に応える取り組みなど「職場の食育」を、福利厚生の目玉にしてはどうでしょう。社員の定着率向上にも、つながるのではないでしょうか。食の関連産業が盛んな鹿児島こそ多くの実践例がつくれる気がしてなりません。

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