鹿児島空港の駐車場が連休や週末に「満車」となるケースが慢性化している。新型コロナウイルス禍で減少した利用者が戻るにつれて混雑が目立つようになった。搭乗時間が迫っても駐車できない実例は珍しくない。
最大の理由は、自家用車で空港に来る人が増えたことだ。ここ数年で一気に進んだ地域交通網の弱体化が背景にある。特に空港と地方を結ぶ連絡バスが減り、利便性が低下した。深刻な運転手不足の中、繁忙期は続行便を出しているという交通事業者にとって、これ以上の増便は容易ではないだろう。
関係者は駐車場の拡張も視野に、県民や県外からの観光客が安心して空港を利用できるよう対応を急ぐべきだ。
駐車場を運営する鹿児島空港ビルディングによると、空港駐車場の収容能力は1600台。周辺の民間駐車場は19カ所3000台分あり、コロナ前の2019年から400台ほど増えている。
空港ビルディングは民間駐車場も含む全てが満杯になると、国内線ビルから700メートル離れた臨時駐車場(1500台)を開放している。混雑予想時には近くにある従業員用駐車場(350台)のうち50台分も提供する。
空港駐車場は2時間まで無料で、利用全体の7割ほどを占める。24年度の満車発生日は83日あり、コロナ前19年度の63日から20日増えた。
駐車場不足の指摘はコロナ前からあった。県が22年にまとめた鹿児島空港将来ビジョンの工程表に「駐車場の立体化」が検討課題に挙がっている。
実現の壁になっているのは、鹿児島空港は国が管理し、駐車場の土地所有者も国である点だ。国土交通省鹿児島空港事務所は「立体化の具体的な検討はしていない」と説明する。利用者の視点で現状を把握し、もう一歩踏み込んだ措置を講じてほしい。
県や空港ビルディング、バス事業者にもできることはあるはずだ。
空港までの連絡バスを運行する鹿児島交通によると、鹿屋、指宿からの便はコロナ前比で半減し、枕崎便は25年4月に直行を廃止した。南国交通と共同運行する鹿児島市内からの便もコロナ前の8割となっている。
残念なのは、鹿児島市内線は1便当たり50人以上乗車できるのに平均25人にとどまる点だ。仮に自家用車での単独移動をバスに切り替える人が1便で5人増えれば、1日62便(往路)で駐車場310台分が浮く計算となる。バスへの一層の誘導が重要といえる。
塩田康一知事は5月の定例会見で、国にハード面の整備を求めていく考えを示し、利用者の実態調査の必要性にも言及した。調査結果を分析し、送迎のための短時間駐車か、搭乗するための複数日利用かで、駐車できる区画や料金体系を分けるといった案も柔軟に検討すべきかもしれない。