梅雨前線が活発化している。気象庁はきのう大隅地方に線状降水帯が発生し、命の危険が及ぶ土砂災害などの危険度が急激に高まったと発表した。県内での発生は今年初めて。午前には奄美地方を除く県内で発生する恐れがあるとして「半日前予測」を出していた。
おとといは山口県を含む九州北部と四国が、きのうは中国、近畿、東海が梅雨入りしたとみられると発表した。8日に梅雨明けが「宣言」された沖縄を除き、各地で大雨に本格的な警戒が必要なシーズンに入った。
温暖化の影響もあり自然災害は地球規模で増えている。「今まで大丈夫だった」といった経験則は当てにならない。改めて身の回りの安全確保について点検してほしい。
5月20日発表の3カ月予報では、その4日前に梅雨入りした九州南部の雨は平年並みか、多い見込み。平年より偏西風が北寄りを流れ、フィリピン周辺の海面水温が高く、太平洋高気圧の西への張り出しが強い。暖かく湿った空気が流れ込みやすい状況だという。
鹿児島は、水を含むと崩れやすいシラス土壌が広がり、毎年のように台風や集中豪雨などに遭遇する。県によると、2024年までの36年間に3242件の土砂災害が発生し、全国で一番多い。
住んでいる場所や通勤、通学ルートが危険箇所に該当していないか再確認することが有効だ。
土砂災害警戒情報や雨量の情報に注意してほしい。気象庁のホームページなどで入手できる。土砂災害や浸水被害の危険度を地図で色分けして示す「キキクル」も公開している。
5月の本紙連載「豪雨と向き合う」では、大雨に備える県内の現状が紹介された。
県は昨年の能登半島地震を受け孤立化集落対策マニュアルを修正。避難所でのパーティション(間仕切り)や段ボールベッド、快適なトイレの設置、無人ヘリを使った物資輸送手段の確保を盛り込んだ。在宅難病患者への停電時の対応強化など県独自の修正も5項目加えた。計画見直し後、県は孤立化の恐れがある集落を洗い出すよう市町村に要請した。
米スペースXの衛星インターネットサービス「スターリンク」を使った通信の確保、高齢者避難を目的とした特別養護老人ホームのショートステイ受け入れといった取り組みも始まっている。
こうした災害への備えや避難所環境が改善される動きは歓迎したい。ただ、災害から命を守るには一人一人の事前の備えと判断、行動が大切であることを忘れてはいけない。災害弱者を地域で支える“共助”も欠かせない。
蒸し暑く湿度が高い時期だ。熱中症や食中毒にも注意してほしい。