社説

[核のごみ処分場]選定の手詰まり明らか

2025年6月28日 付

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場をどこに造るか。青写真が描けなくなっている。
 先ごろ全国の知事を対象に行った共同通信社のアンケートで、受け入れに前向きな現職首長は皆無だった。
 受け入れの賛否を迫られる首長の負担が重いことが一因とみられる。現行の選定方式が手詰まりなのは明らかだ。国は議論を喚起しようと、最終処分場の適地を示した全国マップを2017年に公表したが、自治体の警戒感は根強い。抜本的に見直す必要がある。
 最終処分場選定は、市町村が第1段階の文献調査に応募するか、国の申し入れを受諾するかで始まる。第2段階の概要調査、最終の精密調査に進むには、それぞれの節目で知事と市町村長の同意が不可欠だ。
 今回の知事アンケートで、鹿児島県の塩田康一氏や福島、島根など13知事が受け入れや、選定に必要な3段階の調査に「どちらも反対」と回答した。残る34人にも「賛成」はいなかった。国の責任で選定に取り組むべきだとの趣旨の意見が目立ったのは当然だ。
 最終処分場が必要なのは、国が使用済み核燃料を全て再処理する「核燃料サイクル」を掲げているためだ。核のごみは、その過程で出る廃液をガラスと混ぜて固めたもの。00年に最終処分法が成立し、300メートルより深い地下に埋める方針が決まった。
 候補地探しは難航した。20年にようやく北海道寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村が文献調査を受け入れ、24年に報告がまとまった。同年には佐賀県玄海町が原発立地自治体として初の文献調査に入った。
 だが両道県の知事は建設に反対しており、第2段階の概要調査に進めるかは不透明だ。続く自治体はなく、全国的な議論は広がりを欠く。
 調査実施は、地元住民の分断や農産物への風評被害を招く懸念が拭えない。自治体には文献調査で最大20億円、概要調査で最大70億円の交付金が支払われるため、手を挙げた首長に「交付金目的」との批判が向く実情もある。地元が慎重になるのは無理もない。
 最終処分場を造れなければ、核燃料サイクルを柱とする原子力政策は袋小路に陥る。にもかかわらず、政府が今年2月のエネルギー基本計画改定で原発を「最大限活用」とし、東京電力福島第1原発事故後から続いた方針を転換したのは無責任というほかない。
 九州電力川内原発(薩摩川内市)など各地の原発では、使用済み核燃料を保管するプールの容量が満杯に近づいている。搬出先の日本原燃再処理工場(青森県六ケ所村)は完成が30年近く遅れ、保管の長期化が懸念される。
 国や電力会社はサイクルが実現しない場合を想定し、使用済み核燃料を再処理せず地中に埋める「直接処分」を含めた現実的な方法を整理すべきだ。

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