給付か減税か-。賃金上昇を上回る物価高への対策が参院選の最大の争点となっている。各党には施策の必要性や期待される効果、財源への徹底した議論を期待する。
足元では超長期国債の金利が上昇し、財政の持続可能性が一段と問われている。施策の前提となる財政状況を巡る論戦にも踏み込む必要がある。
有権者には「どれが得か」だけでなく、中長期的な国の針路について納得のいく説明ができる候補、政党を探す視点も大切にしてほしい。
与党は現金給付を打ち出した。子どもや住民税非課税世帯の大人には給付額を手厚くする。
野党は消費税の減税や廃止を主張する。それぞれ賃上げや社会保険料引き下げ、ガソリン税の暫定税率廃止、「年収の壁」引き上げも訴える。
物価高に苦しむ国民の暮らしを支える施策が必要との認識は、与野党に共通する。気になるのは、大盤振る舞いできるだけの財政状況なのかという議論が置き去りにされている点だ。
政府の借金は2024年度末時点で1300兆円超。9年連続で過去最大を更新している。
日銀は昨春まで続けた「異次元の金融緩和策」を終え、「金利のある世界」に戻った。国債の利払いが雪だるま式に増える恐れがある。
国債は買われると金利が下がり、逆だと上昇する。今春以降、債券市場で40年物など超長期国債の金利が急上昇している。与野党の「ばらまき合戦」に対し、市場が警鐘を鳴らしたとの見方もある。
財務省は金利上昇を受け本年度の国債発行計画を修正し、超長期債を減額する。年度途中での見直しは異例だ。
石破茂首相は5月、野党の減税の求めに「わが国の財政状況は09年に財政危機が表面化したギリシャより悪い」と答弁。23年の債務残高の対国内総生産(GDP)比が240%で、09年のギリシャの128.5%を大きく上回っていることを根拠にしたようだ。別の指標を示し異を唱える声もあったが、財政の厳しさは疑いようがない。
6月に閣議決定した「骨太の方針」では、財政健全化の指標である基礎的財政収支(プライマリーバランス)について「25~26年度を通じて可能な限り早期の黒字化を目指す」とした。「25年度」としてきた達成時期の目標をあっさり後退させた。
参院選は、こうした財政について国民が考える機会でもある。弱い立場の人への給付を手厚くするのか、成長分野に投資して強い経済をつくるのか。将来的にどの程度の国民負担が想定され、それを国民間でどう分け合うか。
そんな論戦を各党に強く求める。