事実上の政権選択選挙とも目された第27回参院選で、自民、公明両党の与党は過半数を割り込む大敗を喫した。政権不信任の民意が示されたと謙虚に受け止めるべきだ。
与党が衆参両院で少数になるのは1994年の羽田内閣以来、約30年ぶり。一方、野党第1党の立憲民主党は受け皿になりきれず、批判票は分散した。既存政治への不信は顕著だ。
自民総裁の石破茂首相は続投を表明したが、政権はいつ行き詰まってもおかしくない。日米関税交渉や物価高に直面する政治をどう前に進めるか、各野党も責任の重みを自覚してほしい。
投票率は58.51%と前回2022年参院選を6.46ポイント上回った。戦後の国政選挙では初めて投票日が3連休の中日となり、投票率低下を懸念する声もあったが、期日前投票が過去最多を更新、生活に直結する物価高対策が争点でもあり関心が高かった。
自民の敗因は「政治とカネ」の問題に正面から向き合わず、地に落ちた信頼を取り戻せなかったことだ。物価高対策や関税交渉も目立った成果は上がっていない。公約で給付金を打ち出したが、財源論で減税を拒んできただけに一貫性がないとみなされた。
「自民王国」とされてきた鹿児島をみても、比例代表別は自公など既成政党が軒並み得票率を落とした。交流サイト(SNS)利用にたけた新興の参政党やれいわ新選組が伸ばした。
業界団体や労働組合の「組織票」の力が薄れる一方、特に若い世代にSNSが浸透し、投票に向かった印象だ。既存政党が、選挙運動の在り方を見直す時期に来ているのは間違いない。
石破氏は自公両党による非改選を含む過半数確保の「必達目標」を逃し、唐突に「比較第1党」を続投の大義名分に持ち出した。
野党の足並みがそろわず、少数与党でも国会運営が可能と踏んだのか。歴史的と言える惨敗に、求心力を保てるか、問われる。森山裕幹事長ら党執行部の引責辞任も取り沙汰されている。
今後、政府提出の予算案や法案の成立はおぼつかない。政策ごとに野党の協力を得る「部分連合」を模索する。
立民は、自公を過半数割れに追い込んだものの、党勢拡大はならなかった。公約に掲げた消費減税は一定の評価を得たと解釈できるが、財政悪化の懸念から疑問視する声は根強い。恒久的な財源論について、有権者側も冷静に見定めなくてはならない。
各党が参院選で独自に掲げた公約実現を自公に迫る展開では、混迷は深まるだけだ。聞こえのいい政策ではなく人口減少や社会保障、安全保障の在り方について国会で丁寧に議論し、政治への信頼を取り戻すべきだ。