8回の閣僚協議を経て日米関税交渉が決着した。日本に対する「相互関税」を15%とすることで合意し、米側は宣言していた25%から引き下げた。
既に25%が課されている自動車と主な自動車部品の分野別関税も、15%となる。日本は米国産のコメ輸入量を増やす。
一連の関税措置の撤廃を要求していた日本にとって譲歩を余儀なくされた形だが、一定の引き下げを認めさせたことは成果だ。ただ依然高水準の税率は続き、国内産業は下請けから中小企業まで大きく影響を受ける懸念がある。政府は合意内容を早急に精査し、必要な対策を進めなければならない。
トランプ米政権は当初、自動車を協議対象から外す考えだった。しかし、日本側は対米輸出額の3割弱を占める自動車の関税引き下げこそが最重要課題。ねばり強い交渉で包括的な合意にこぎ着けた。
米政権は8月1日を発動期限とし、主要な貿易相手国と交渉している。一つでも多くの国と合意を成立させようと日本側に歩み寄ったのだろう。
合意で、日本は主食用に使える米国産のコメの輸入を、約77万トンのミニマムアクセス(最低輸入量)の枠内で拡大する。国内は昨年来のコメ不足と価格高騰を受け、生産抑制から増産にかじを切る流れがある。流入増が農家の経営を圧迫しないか見極めが必要だ。
15%の相互関税は、既に実行されている10%からのさらなる引き上げとも見ることができ、輸出企業には打撃だ。品目別の詳細はまだ不明だが、鹿児島県産のブリや茶などの輸出にもマイナスの影響が心配される。政府は必要に応じて支援策を講じてほしい。
日本は対米投資に関し、政府系金融機関を通じ最大5500億ドル(約80兆円)規模の出資、融資などを提供可能とすると合意した。「米国第一主義」を掲げるトランプ氏にとって、米国内の産業の再生という高関税の目的に合致するものだろう。ただ日本企業の現地生産拡大などが、国内産業の空洞化を招かないか注視が必要だ。
忘れてはいけないのは、米側の一方的な高関税は貿易ルールを無視した不当な措置であることだ。日本は関税引き下げや撤廃を求め続けなければならない。欧州やアジア各国と連携し、国際協調重視を訴えることも求める。
参院選で大敗した石破茂首相は続投の理由の一つに関税交渉を挙げた。交渉合意後のきのうも、重ねて退陣を否定した。だが合意に至り、自民党内外で退陣要求が加速する可能性がある。
一方、今回の合意では防衛費は対象外とされた。米政権は日本に防衛費の大幅増額を求めており、今後は圧力が強まることも予想される。難題が続く中で、政治の混迷が続くのは国民のためにならない。