参政党が参院選で当初目標6議席の2倍を超える14議席を獲得した。
「日本人ファースト」といった分かりやすい言葉で有権者の不満をすくい上げ、人口減少や格差拡大に打つ手がない既成政党に代わり「日本を変える」と訴えた。交流サイト(SNS)も有効に駆使した。
物価高と円安が暮らしを直撃している。低賃金で社会保障の負担を背負わされる就職氷河期世代や若者、日本の未来に希望を持てない保守層の心に、参政の主張は刺さったと言える。
だが、欧米の右派ポピュリズムに通じる主張には排外主義拡大の懸念がつきまとう。その一つが外国人への規制強化が争点化したことだ。参政に引きずり込まれる形で各党が対抗策を打ち出し、成長戦略や少子化対策など重要な課題を巡る論戦は埋没した。
参政は元自民党員で大阪府吹田市議だった神谷宗幣氏を中心に2020年に発足した。22年参院選で初の議席を獲得、24年衆院選で3人が、今回の参院選直前に維新から1人が加わった。
原動力の一つに地方組織が挙げられる。新興勢力ながら地方議員は150人を超える。鹿児島県内では喜界町を皮切りに三島村、南九州市、鹿児島市、与論町に計5人を数え、離島の町議選に神谷代表が駆けつけマイクを握ることもあった。県内の衆院全4選挙区に支部も立ち上げ済みだ。
資金調達も草の根型を示す。24年公表の政治資金報告書によると収入は約12億円。党員が払う党費が約4億4000万円、個人献金約1億3000万円と両方で約45%を占める。各地で開く講演会やイベントの収入は約4億2000万円。地方議員や党員、ボランティアがポスター貼り、ビラ配り、街頭演説の支援を率先、SNSで情報を拡散する。
参院選で神谷氏が各地の街頭に立つと、猛暑に負けず盛り上がった。鹿児島市での演説では、排外主義につながるとの懸念に「差別と言われるが、そういう言い方は一切していない」と反論した。
それでも「教育勅語の尊重」など戦前に回帰するかのような憲法構想案、「終末期の延命措置の全額自己負担化」「核武装が最も安上がり」といった政策や当選者の主張は危うさが伴った。こうした発言は物議を醸すが、かえって耳目を集め議席を増やした。
選挙後の党定例記者会見では批判記事を書いた記者の出席を拒否した。公党としてあるまじき対応である。
全国の選挙区投票率は3年前の前回より6.46ポイント高い58.51%。鹿児島も7.83ポイント増え56.46%だった。出口調査から、無党派や若年層を掘り起こしたとみられる点は評価していい。
政治参加は投票だけではない。党の今後の活動を見極め、評価を下すのもまた有権者の役割である。