イスラエル軍による封鎖が続くパレスチナ自治区ガザで、食料不足が深刻化している。ガザ当局によると飢餓や栄養失調の死者は150人を超えた。
人道危機は極限に達し、放置できない。イスラエルの強硬姿勢に憤りが噴出、圧力を強める動きが広がっている。先進7カ国(G7)のうちフランスに続き英国、カナダがパレスチナを国家承認する方針を表明した。
国際社会の警告をイスラエルは受け止めなくてはならない。支援食料の無条件搬入を認め、一刻も早く和平交渉を進めるべきだ。
イスラエルとイスラム組織ハマスの合意で1月に停戦合意が発効したが、イスラエル軍は3月18日に大規模攻撃を再開した。2023年10月の戦闘開始以降の死者は6万人を超えた。
2年近い攻撃によってガザの産業は壊滅し、住民は支援物資だけが頼りだ。国連主体で食料を配布してきたが、イスラエルはハマスが略奪していると主張し、3月以降は厳しく制限。5月下旬から米国とイスラエル主導の「ガザ人道財団」が食料配布を始めた。
だが、配給拠点はガザ中部と南部の4カ所のみで、国連主体と比べ100分の1ほどに減少した。殺到する住民へイスラエル軍の発砲が続発し、死傷者が相次いでいる。日本や英国など28カ国は声明で、食料配給の下、軍が住民多数を「非人道的に殺害」し、住民の尊厳を奪う仕組みだと非難した。
世界保健機関(WHO)によると、乳幼児の栄養失調は6月以降、3倍に急増。イスラエル寄りのトランプ米大統領すら「一部の子どもたちは本物の飢餓状態」と公言、距離を置く。
飢餓死の惨劇について、ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の歴史を背負うイスラエルの人々は、誰よりも理解しているはずではなかったのか。
1993年の「オスロ合意」以降、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」の機運が高まり、国際社会は支持してきた。約150カ国が、パレスチナ国家を承認済み。ガザの戦闘が長期化する中、昨年、スペインやアイルランド、ノルウェーに広がっていた。
日本、米国を含むG7は国家承認は見送っていた。だがガザ攻撃の手を緩めず、パレスチナ国家樹立による共存を拒絶するイスラエルのネタニヤフ政権への危機感が高まり、フランスなど3カ国が承認に転じる形だ。中東和平に向け大きく踏み込んだ。
7月末、国連であったパレスチナ問題の解決を目指す国際会議で、120以上の参加国は「2国家共存」が唯一の解決策だと訴えた。国家承認には慎重な日本も、態度を明確に示す必要に迫られる可能性がある。イスラエル、パレスチナの共存には、双方の信頼醸成が前提となるが、日本が果たせる役割があるはずだ。