社説

[アフリカ会議]築いた信頼で共に前へ

2025年8月22日 付

 アフリカの約50カ国の首脳らが参加し横浜市で開幕した第9回「アフリカ開発会議(TICAD=ティカッド)」がきょう、3日間の日程を終える。

 人口増が続くアフリカは若者が多く、鉱物資源も豊かだ。将来性に期待が高まるだけに、影響力を広げようという欧州や中国、ロシアなどの進出競争が近年激化している。

 “出遅れ感”が否めない日本だが、国連も巻き込んだTICADを主導し、いち早くアフリカ関与に着手してきた実績がある。築いた信頼を基に、共に前進し、新たな経済機会を生むパートナーとして存在感を高める時だ。

 第1回の会議は1993年。アフリカの開発や支援について議論する首脳級の国際会議としてスタートした。

 東西冷戦が終わり、勢力争いの舞台だったアフリカの支援から欧米が手を引く時期で、日本には、国際社会の関心を呼び戻す狙いがあった。

 初期段階では日本の経済力を生かし、開発援助を柱に、関係を構築した。アフリカ経済が成長軌道に乗り、民間ビジネスや投資促進に軸足を移したものの、政情不安などアフリカ特有のリスクが拭えず順調に進んでいない。

 TICADと同様のフォーラムを欧州連合(EU)や中国が創設したのは2000年、米国は14年と歴史が浅い。日本は先駆者なのに、後発の国々が優位な地位を得ているのは残念だ。

 50年には世界人口の4人に1人をアフリカが占めるとされる。魅力ある市場だ。さまざまな課題解決に向け、日本の技術移転や人材育成の支援を通じてできることはないか探りたい。

 TICADがきょう採択する「横浜宣言」には、人工知能(AI)の促進支援が明記される方針。重要鉱物資源の安定供給に向けた幹線道路整備の推進や、アフリカ諸国が抱える債務の適切な管理、域内での関税撤廃を通じた自由貿易推進も盛り込んだ。

 共同議長を務める石破茂首相は、インド、中東諸国とアフリカを結ぶ新たな経済圏構想も表明した。アフリカ、日本双方の利益となり、結びつきを強める取り組みを加速させるべきだ。

 日本は少子化で将来の労働力不足が懸念される。アフリカでは若者の失業や働き口確保が課題という。鹿屋市のサツマイモ農場が昨年マダガスカル人を受け入れたように、地域社会の働き手をアフリカから獲得する動きが進む可能性もある。文化の違いを理解し、共生できる素地づくりが大事だろう。

 米国第一主義を掲げるトランプ政権が途上国支援に消極姿勢を見せる中、中国はアフリカから輸入する製品の関税をゼロにするなど影響拡大を狙う。日本は対米関係を安定させつつ、アフリカをはじめとするグローバルサウスと連携強化を図り、自由貿易体制を守る役目を果たさなければならない。

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