石破内閣の支持率が今月、35.4%に回復した。7月の参院選に大敗した石破茂首相が「辞任するべきだ」との声は、選挙直後から大きく減った。
首相の進退を巡り、退陣要求が相次ぐ自民党内と民意のずれが浮き彫りになった。「石破降ろし」は国民不在の内輪もめに映っているのではないか。
問われているのは党の自浄能力だ。社会保障制度改革や物価高対策、外交の課題も山積しており、停滞は避けねばならない。少数与党の政治をどう前進させるか、道筋を描くべきだ。
共同通信社の7月調査で内閣支持率は昨年10月の内閣発足以来最低となる22.9%だった。8月下旬にあった調査では12.5ポイント上昇した。石破首相が「辞任するべきだ」との回答は40.0%で、「辞任は必要ない」57.5%の方が多く、7月と逆転した。
報道各社が今月実施した世論調査も内閣支持率が上昇。石破首相の辞任は不要とする回答が「辞任するべき」を上回った。
8月に入り広島、長崎など慰霊行事が続いた。首相が自分の言葉を盛り込んだスピーチを好意的に受け止める声があった。アフリカ開発会議(TICAD)など外交の「見せ場」が相次いだことも影響したとみられる。
ただ支持率が上昇したといっても、不支持率は49.8%で依然上回っている。「支持する」とした最も大きな理由は「ほかに適当な人がいない」が53.8%と最多。この回答割合は6月41.7%、7月49.3%と徐々に増えている状況で、積極的な支持の広がりとはかけ離れている。
そもそも参院選で自民が大敗した最も大きな原因を尋ねる質問には「裏金事件など政治とカネ問題への対応が甘かったから」が49.0%と最多だった。党の「顔」がだれであろうが、「政治とカネ」について改革を先送りにしてきた自民への審判だったことは明らかだ。派閥裏金事件を引き起こした旧安倍派などが引責論を主導しているように見えるのも、国民の反感を招いたのではないか。
中道的な石破政権を嫌い、自民支持層から右派層が離れた、との見方もある。石破内閣発足直後の昨年10月調査で自民の政党支持率は42.3%だったが、今回は22.5%と20ポイントも低くなった。保守的な主張をする新興野党の支持層ほど首相の辞任を求めていることに一端がうかがえる。
選挙の責任論は収まりそうにない。9月初旬に両院議員総会で、敗因の検証結果が報告されるのを受け、事実上、首相退陣を迫る総裁選前倒しの是非について所属国会議員と都道府県連に意思確認が始まる見通しだ。「反石破」勢力の動きが活発化しそうだ。石破降ろしの決着が長引くほど、国民の視線は冷めかねない。