社説

[自民参院選総括]国民の不信を自覚して

2025年9月4日 付

 自民党は参院選大敗を検証する総括報告書を取りまとめた。政策立案に関し対話の努力を怠り「国民との意識の乖離(かいり)を起こした」と明記。「自民離れ」の現状を認めざるを得なかった。国民の不信を自覚し、反省を生かした党改革を急がなくてはならない。

 森山裕幹事長ら党四役は辞意を表明し、進退を総裁である石破茂首相に委ねた。首相は自らの責任を認めながら、当面の続投意向を示している。

 反石破勢力からは退陣論が噴出する。総裁選前倒しを巡る手続きも始まり、党内攻防は本格化した。党再建そっちのけで内紛が続けば、有権者の失望は深まりかねない。

 総括報告は主な敗因について内閣支持率の低迷で党支持率も低下したと分析。「自民の基礎体力の低下そのもの」と言及した。

 「自民離れ」の要因としては物価高対策など9項目を挙げた。公約に掲げた現金給付は国民に響かず、消費税減税を訴える野党に対抗できなかった、と顧みた。政治とカネを巡る不祥事については「自民に対する不信の底流となっている」と断じ、猛省を促した。

 「解党的出直しに取り組む」決意を強調する一方、改善策は危機感に乏しい。具体策は危機管理体制や地方組織の強化、SNS(交流サイト)を通じた発信力強化などにとどまる。

 党総裁である石破茂首相の責任論にも直接触れていない。両院議員総会で石破首相は自身の進退を巡り「しかるべき時に決断する」とし、具体的な見通しを示さなかった。

 報告書の作成は森山氏が委員長を務める総括委員会が担当、当初から「結論ありき」との批判があった。森山氏ら執行部の狙い通り、責任の所在はぼかされた形ともいえる。大敗の責任のけじめが宙に浮くことになれば、「石破降ろし」は収まらないだろう。

 総会を経て閣内でも総裁選前倒し論が拡大、政権が行き詰まる可能性は増す。焦点は、屋台骨となってきた森山幹事長の処遇だ。石破首相は「(進退伺については)適切な判断をするが、余人をもって代え難い方」と述べた。実際に引責辞任となるのかは、不透明だ。

 首相は総会で国民に対し「石破であれば変えてくれる、という期待を裏切った」と謝罪。党内融和への配慮や少数与党下で「石破らしさ」を失い、「何をしたいのか分からない」との批判につながったと、と振り返った。

 求心力が低下する中、どうリーダーシップを発揮して政策実現を図るのか問われる。自らの延命のための曖昧戦術で混乱が長引くのは許されない。

 党内抗争によって、政治資金問題などの与野党協議は停滞している。反石破勢力が首相交代を迫るのであれば、政治改革の具体的な方針を併せて訴える必要がある。

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