社説

[自民総裁選へ]どんな国家を目指すか

2025年9月10日 付

 石破茂首相の退陣表明に伴う自民党総裁選は、今月22日告示、10月4日投開票と決まった。所属国会議員と全国の党員・党友が参加する、いわゆる「フルスペック」形式で行われる。

 参院選直後から続く政治空白は、さらに1カ月続くことになる。自民は混乱を招いた責任を深く反省した上で、国民に開かれた選挙を実現しなければならない。

 重要な論点は、直面する政策課題への具体的な処方箋だ。どんな国家を目指すのか中長期のビジョンを打ち出すことも重要だろう。信頼を失った党の再生策を含め、各候補者は実現の道筋を明確に示し、競い合ってほしい。

 「ポスト石破」の候補はいまのところ5人だ。茂木敏充前幹事長は一番に名乗りを挙げた。高市早苗前経済安全保障担当相と林芳正官房長官は出馬の方針を固めた。小泉進次郎農相と小林鷹之元経済安保相にも動きがある。

 衆参両院で公明党とともに少数与党に転落したのは、石破氏の指導力不足によるところが大きい。ただ根本の要因は、自民派閥の裏金事件に端を発した深刻な政治不信だ。事件究明への姿勢が各候補者の試金石になる。具体的な政治改革の在り方を提起すべきだ。

 旧安倍派を中心とした「裏金議員」は、真相解明への協力に終始消極的で自民の自浄能力を疑わせた。「石破降ろし」を主導したこれらの議員の復権を許せば、国民の納得は得られまい。

 政治空白の長期化で物価高騰といった重要課題への取り組みは、さらに遅れていく。少子高齢化に伴う社会保障制度の改革、防衛力強化、日米合意通り履行されるか予断を許さないトランプ関税への対策など内外の懸念材料は山積する。

 少数与党の状況で着実に対応するには野党との連携が不可欠だ。これまでのように政策や法案ごとに協力を得る部分連合か、連立の枠組みを拡大するか。多数派形成の戦略が求められる。

 ネットや交流サイト(SNS)の普及が社会の分断を加速させている。格差拡大により過激な主張が目立つ政党も台頭してきた。分断を回避し、ポピュリズムに陥ることのない政治を実現できるか。「寛容と包摂を旨とする国民政党」の存在意義に関わる。

 存在意義を問われるのは野党も同じだ。自民の新総裁が首相に選出される保証はなく、野党がまとまれば政権交代も可能な局面だが、その気配はない。

 ガソリン税の暫定税率廃止は時期や代替財源を巡り与党との協議が平行線のままだ。参院選で各党が訴えた消費税減税案は対象も税率も異なる。協議して「最大公約数」を導き、与党に突き付けることを検討すべきだろう。

 自民の混乱に手をこまねくばかりでなく、これらの課題を早急に軌道に乗せる方策を探らなくてはならない。

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