社説

[立民の新体制]党勢立て直しが急務だ

2025年9月18日 付

 立憲民主党が新体制を発足させた。15日には設立5年の節目を迎えた。

 先の参院選では自民、公明の与党が惨敗したにもかかわらず、議席を増やせなかった。国民民主党や新興の参政党などの躍進に比べて、埋没感は否めない。

 石破茂首相の退陣に伴い、自民は総裁選を控える。政治を停滞させず、野党第1党としての責任と存在感を示していけるか。党勢立て直しが急務だ。

 立民は改選22議席から横ばいに終わった参院選を「事実上の敗北」と総括。執行部の責任を問う声が上がり、野田佳彦代表は人事を刷新する考えを示していた。

 新執行部は党運営の要となる幹事長に、与野党にパイプを持つ安住淳衆院予算委員長を据えた。代表代行や政調会長には衆院当選2回の若手議員を登用し「安定と刷新」を打ち出した。だが、顔ぶれを替えれば党勢回復の道が開けると期待しているのなら甘い。

 参院選の比例代表の得票では、国民民主や参政党にも及ばず野党第3党に沈んだ。投票率の上昇に伴う新規投票者層や若者世代から「既存政治の枠内」と見なされたことを敗因に挙げた。

 政権交代を実現する覚悟が伝わらず、野党第1党の維持に満足しているように見えることも、政権批判の受け皿になれなかった原因だろう。野党内の立ち位置すら揺らぐ結果と言える。

 現在の立民は、枝野幸男氏らが設立した旧立民や旧国民民主党などの議員で結党した。2021年衆院選の敗北を受け、枝野氏が代表を辞任、後任に泉健太氏が就いた。昨年9月の代表戦で野田氏が代表に就任した。直後の衆院選で自公を少数与党に追い込んだが、首相指名選挙の決選では野田氏への投票で野党の協力を得られなかった。

 立民と同時に生まれたのが国民民主党だ。立民に加わらなかった旧国民の議員が設立した。SNS(交流サイト)戦略が奏功し、玉木雄一郎代表の「個人政党化」に成功。手取り増を唱え無党派層の支持を得た。民主党という同じ源流を持ちながら勢いは対照的だ。

 両党を支援する連合は、候補者の一本化など連携を求めている。しかし党勢の差から、温度差があるのが現状だ。自民総裁選後の首相指名選挙の連携も見通せない。

 参院選では減税や社会保険料引き下げなど国民受けを狙った公約が目立った。中道的な石破政権を嫌った右派層が、新興野党に流れたとの見立てもある。基本政策が左右に大きく隔たる野党の結集は一層不透明な状況だ。

 今こそ立民には、穏健な「中道層」を狙い、軸足を定めた政策が迫られている。一人一人が尊重され、持続可能な社会をどう築いていくのか。将来不安を拭えない有権者に対し、分かりやすい発信にも努めてほしい。

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