社説

[置き配標準化]利用者理解欠かせない

2025年10月14日 付

 宅配ボックスや玄関先に荷物を届ける「置き配」を宅配便の標準サービスにする議論が進んでいる。国土交通省の官民による検討会は、近く方向性をまとめる予定だ。

 宅配便は今や日常生活に欠かせない。物流業界で人手不足が深刻化する中、大きな負担となっている再配達の削減は喫緊の課題に挙がる。自動車の燃料費や排出される二酸化炭素による環境負荷も看過できない。

 ただ拙速に置き配の標準化を進めると混乱を招きかねない。まずは利用者の理解が必要だ。盗難や誤配送、個人情報の流出といったリスクを抑え、安心して利用できる対策が欠かせない。

 物流各社は、国交省が作った宅配便の基本ルールを基に、荷主との契約条件などを盛り込んだ「運送約款」を策定している。現行ルールでは対面で荷物を受け渡すことになっており、置き配の規定はない。受け取り側が選ぶオプションサービスのケースが多い。

 インターネット通販の拡大に伴い、宅配便の取扱個数は高止まりが続く。2023年度は50億個余りで、9年連続で過去最多を更新した。

 受取人が不在の場合は再び配達に行く必要があり、業者の負担が増す要因となっている。ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の大手3社の今年4月の再配達率は9.5%。最近は微減傾向だが、24年度末までに6%に引き下げる政府目標には届かなかった。

 置き配は再配達を減らす効率化の一手である。新型コロナウイルス禍を経た生活様式の変化などに伴い、受け取り側の理解が進む。一般的には、希望した場合、玄関の前やガスメーターボックス、自転車のかごなど事前に指定した場所に荷物を置いた時点で配達完了となる。利用者側は配達時間を気にしなくてもいい利点がある。

 一方、利用をためらう要因も少なくない。玄関前に置かれた荷物が盗まれたり、雨で濡れて破損したりする可能性がある。伝票の個人情報を他人に見られることへの抵抗感も根強い。

 業者がマンション玄関のオートロックをどう解錠するかも課題である。置き配が標準的な受け取りになった場合、対面での受け取りや再配達に追加料金がかかる懸念も残る。

 宅配ボックスは利用者と宅配業者双方に有効な手段だ。ただ新築マンションなどでは設置が進むが、一戸建て注文住宅では初期費用を抑えるために設置を見送りがちだという。既存の戸建てや古い集合住宅も含め、補助金制度の拡充などでの後押しも必要だ。

 利便と安全をどう両立させるか。課題を一つ一つ検証し、社会全体で物流の持続性を確保する知恵を出し合う時だ。利用者も再配達を減らす意識改革が求められる。駅やコンビニでの受け取りも活用したい。

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