子牛価格下落続く 前年より10万円以上落ち込み 飼料高騰、外食需要減…購買者の肥育農家に先行き不安 枝肉相場弱含みで「高く買ったものを安く売る」状態に 鹿児島県内

2022/08/23 12:00
競りにかけられる子牛=7月、曽於市の曽於中央家畜市場
競りにかけられる子牛=7月、曽於市の曽於中央家畜市場
 鹿児島県内で子牛価格の下落が続いている。今年1〜7月の平均価格はいずれも前年を下回り、5月以降は2年ぶりに50万円台まで落ち込んでいる。飼料高騰や新型コロナウイルスの感染再拡大による外食需要の減少で、子牛の購買者である肥育農家が、経営への不安感を高めていることが背景にあるとみられる。

 7月末、県内で最も上場頭数が多い曽於中央家畜市場の子牛競り市を訪ねた。子牛の手綱を引いて競り場に立つ出品農家の表情はさえない。

 電光掲示板に映し出された数字が60万円を超えるとホッとした様子で、会場を後にする。中には応札がなく、競りの開始価格が下がっていく牛もいた。3日間の平均価格は約55万円。前月より8万円下がった。

 2頭を出品した志布志市松山の岩原勇次さん(60)は「2頭の合計は期待していたよりも15万円くらい低かった」とため息をつく。この価格でも10年ほど前に比べれば高い水準ではあるものの「えさ代なども急激に上がり、利益は減ってきている」と話す。

 子牛競り市を運営するJA県経済連のデータによると、子牛の平均価格は今年5月以降、前年より10万円以上下げ、60万円を割り込んでいる。7月は、新型コロナウイルスの感染拡大で外食などの業務需要が大幅に減った2020年5月並みの57万円台に下落。8月も前回割れが続くなど、回復の兆しは見えない。

 子牛価格が振るわない理由として同肉用牛課が指摘するのは、肥育農家の先行き不安だ。ウクライナ情勢で肥育に欠かせない飼料価格は高止まりしている。さらに、新型コロナの第7波で飲食店需要が落ち込み、枝肉相場は弱含みで推移しているため、赤字を恐れて購買意欲の低下につながっているという。

 鹿屋市の肥育農家中山高司さん(71)は「どこかでコストを節減しないと経営が立ちゆかなくなる」と話す。えさ代や人件費の削減は難しく、子牛の導入費を抑えることで対応している。

 和牛の肥育には通常20カ月ほどかかる。そのため現在出荷される牛は、20年末から21年初頭に導入したものだ。この頃は県内の平均価格が70万円を超え、100万円台で取引される牛も少なくなかった。現在の枝肉相場を考えると、「高く買ったものを安く売る」状態になっていることも、肥育農家の資金繰りが厳しくなっている一因とみられる。

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