森友文書改ざん 赤木ファイル「抵抗」の跡 妻雅子さん全国行脚「夫助けられなかった後悔。真相知りたい」

2021/07/11 21:29
「真実を知りたい」。開示された「赤木ファイル」を指さし取材に応じる赤木俊夫さんの妻雅子さん=鹿児島市の南日本新聞会館
「真実を知りたい」。開示された「赤木ファイル」を指さし取材に応じる赤木俊夫さんの妻雅子さん=鹿児島市の南日本新聞会館
 森友学園の国有地売却問題を巡る財務省の決裁文書改ざんで2018年3月、自殺に追い込まれた近畿財務局元職員赤木俊夫さん=当時(54)=の妻雅子さん(50)が、鹿児島市の南日本新聞社を訪れ、インタビューに応じた。6月下旬に開示された「赤木ファイル」で判明した真相や亡き夫への思いを聞いた。

 -ファイルは518ページに上った。
 「手書き部分を目にし、夫が残したものだと実感して胸が詰まった。ただ、指示者名が黒塗りで指示系統が不明。なぜ改ざんしなければならなかったのか、真相につながるところが断絶されている。絶対に公開してほしい。原本提出も国に訴えていく。真実に近づくには時間がかかる」

■手書きで「修正等の必要なし」

 -国は当初、ファイルの存否を答えず、裁判で請求から開示まで1年以上かかった。
 「隠したかったのでは。安倍晋三前首相や昭恵夫人、麻生太郎財務相らの名前部分の削除を指示した文書が含まれていた。夫が本省(財務省)の人宛てに『調書を修正することに疑問が残る』と抵抗したメールや、『修正等の必要なし』と手書きした箇所もあった」

 -自宅に残されていた手記との違いは。
 「本省とのやり取りメールが多く添付されていた。本省側の人が『ことが終わったらおごります』と記した生々しい表現もあった。本省内のメール記録も出してほしい。深夜帰りが続く中、気になる書類を印刷してまとめていたようだ。作成する行為自体が危険だったはずだが、このままではいけないと思ったのだろう」

 -安倍前首相の公式ツイッターは、ファイルに記載された「現場として(森友学園を)厚遇した事実はない」との一部を引用し、「赤木氏は明確に記している」と発信した。
 「夫を何度も殺されたような感覚になる」

■「私の雇用主は日本国民」

 -俊夫さんはどんな人だったか。
 「近所の人に『私の雇用主は日本国民』と語っていたそうだ。国家公務員倫理カードも持ち歩いていた。改ざん行為は犯罪だが、夫はやってしまったことを世に残したくてファイルも手記も残した。尊敬している」

 -国を訴えるなど闘い続ける訳は。
 「真実が知りたい。子供がなく、夫が一番大事な家族で大好きだった。改ざんから亡くなるまでの1年、壊れていく姿を隣で見て一緒に苦しんだ。助けられなかった後悔がある。なかったことにするのは許せない。命を奪うようなことが二度と起きないためにも、真相解明と再調査が欠かせない。今も本当のことを話せず苦しむ関係者がいると思う」

■「世論の力が支え」鹿児島で7道県目訪問

 -5月から全国各地を訪ね、森友事件の周知を始めた。
 「事件を知らない人に出会ったのがきっかけで、鹿児島が7道県目になる。世論の力が支えなので、多くの方に知ってもらいたい。やりたくない仕事を押しつけられるなど、夫に起きたことは誰にでも起きる。命だけは絶たないでほしい」

 「この1年、九州豪雨の被災地ボランティアに鹿児島経由で通い、仲間もできた。桜島と朝日の眺めに元気をもらう。何度かLINEでやり取りした安倍昭恵さんにも写真を送った。既読になったが、返信はない」

(赤木雅子さんは7月5日に南日本新聞社に来社した)


【森友学園問題】 
 学校法人「森友学園」が取得し、小学校新設を計画していた大阪府豊中市の国有地が8億円余り値引きされたことが2017年2月に発覚。名誉校長に安倍昭恵前首相夫人が一時就任していた。財務省の佐川宣寿理財局長(当時)は国会答弁で、森友側との事前価格交渉を否定したが、交渉をうかがわせる内部文書などが明らかになり、同省が決裁文書を改ざんしていたことが判明した。同省は18年3月、決裁文書14件の改ざんを認め、同6月、佐川氏ら20人を処分。佐川氏や財務省関係者らは虚偽公文書作成容疑などで告発されたが、いずれも不起訴となった。

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