ロシアにバレエ留学の13歳、ウクライナ侵攻で生活緊迫 家族との連絡断たれ、クレカ使えず、友人から「どちらの国の味方か」と…再開願い一時帰国

2022/06/06 11:00
ワガノワ・バレエ・アカデミーで練習する熊野悠大さん=2021年11月、ロシア・サンクトペテルブルク(本人提供)
ワガノワ・バレエ・アカデミーで練習する熊野悠大さん=2021年11月、ロシア・サンクトペテルブルク(本人提供)
 ロシアの名門バレエ学校に留学中の鹿児島市の中学生熊野悠大さん(13)が、ロシアのウクライナ侵攻に伴う情勢の緊迫で一時帰国した。「学校ではロシア人もウクライナ人も寝食を共にしていた」と両国の戦争に心を痛め、「また皆で舞台に立ちたい」と一日も早い終結を願う。

 熊野さんは小学1年でバレエを始めた。鹿児島大学付属中1年だった昨年8月、コンクールに出場。世界的に知られるロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミー入学の許可を得た。

 同年9月に留学。午前はロシア語、午後はバレエの練習や舞台リハーサルの毎日を送った。余分な筋肉を付けず、バレエに適した体形に成長するため、食生活や運動も管理された。「人を魅了できる表現者」を目指し、プロダンサーの夢を追っていた。

 ところが今年2月、ロシアがウクライナに軍事侵攻したことで生活は変わった。欧米などの経済制裁で海外のクレジットカードが使えず、買い物ができなくなった。日本の家族との連絡手段だったフェイスブックも遮断された。街頭ではデモが発生。ロシア人の友人から「日本はどちらの国の味方か」と問い詰められることもあった。

 他の日本人留学生と話し合い、3月中旬にトルコ経由で鹿児島市に戻った。付属中に通いながら、放課後に市内のバレエ教室で練習に励んでいる。外務省はロシアへの渡航中止を勧告しており、他国への留学を勧める声もあるが、「最高峰のロシア・ワガノワで学びたい」と新学年が始まる9月の留学再開を望む。

 母の翔子さん(38)は「人生を懸けて努力しているので戻してあげたいが、何を基準に判断していいのか分からない」と複雑な胸中を明かす。

 熊野さんは帰国後、ロシア語が堪能でなかった留学中より、ニュースでウクライナ情勢が分かるようになった。激しい爆撃にさらされる様子に胸を痛めるとともに、「混乱が伝えられるロシア国内で、バレエなど芸術に携わる人はどうなってしまうのか」と先行きを案じている。 

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