何が見つかるか分からない所で、出合った化石を研究する独自スタイル。「ボーンベッド」を発見した学者は言う。「現地をよく観察する。化石ハンターや地元の人に学ぶ…恐竜がどう生きていたか見えてくる」

2022/08/08 11:03
獅子島で薩摩翼竜の化石を見つけた際の筆者(右)と中島保寿さん。白亜紀当時の地層の堆積環境などについて検討中=2020年11月
獅子島で薩摩翼竜の化石を見つけた際の筆者(右)と中島保寿さん。白亜紀当時の地層の堆積環境などについて検討中=2020年11月
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん 古生物学者・東京都市大学の中島保寿准教授に聞く(上)

 サラリーマン化石ハンターの私にとって、東京都市大学の中島保寿(やすひさ)准教授(40)は学術研究に欠かせないパートナーです。地球上の生物の進化を化石などから研究する古生物学者で、獅子島では一緒に翼竜の化石や、恐竜の骨が密集した「ボーンベッド」と呼ばれる層を発見しました。2回にわたり中島さんへのインタビューを紹介します。

 ―中島さんは今までの恐竜研究者とはかなり違ったスタイルですよね。

 「フィールドワーク(野外調査)を非常に大切にしています。普通は対象の生き物を決めて研究しますが、私は何が見つかるか分からない所に行って、出合った化石を研究します」

 ―フィールドによく出て、しかもよく化石を見つける研究者。こんな人はあんまりいないようです。

 「日本は恐竜化石の発見は少なくて、恐竜研究に向いてないと言われていた時期がありました。そのため、海外で見つかった化石や博物館の収蔵品をメインに研究している人が多いんです」

 ―6月1日付の連載第5回で紹介したサツマウツノミヤリュウのペリット(吐しゃ物)の分析調査もしていただきました。

 「化石を見つけたら、まずはどんな生き物か、その次にどう生きていたかを探ります。見逃してはならないものが何かないかと考えながら観察します。ペリットは宇都宮さんが『何か変なものが入ってる』と疑問に思ったからこその発見。新種の発見以上に、生きざまの一端が見えたことが重要でした」

 ―骨の形態・形状だけでなく、生態などの見えないところを明らかにすることが大切ということですね。
 「私はそれを化石ハンターや地元の人から学びました。彼らは頻繁にフィールドに出て、現地をよく見ている。化石を掘る前に石とか地形とか自然の情報がたくさんあると教えてもらいました」

【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。

(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県」より)

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