浜競馬を前にポニーとともに調整する関係者ら=16日、いちき串木野市の照島海岸
鹿児島県いちき串木野市の春の風物詩「串木野浜競馬大会」が23日開かれる。新型コロナウイルスの影響で中止が続き、4年ぶりの開催。県内外から大勢の見物客が訪れる一大イベントに向けて、関係者は浜辺の整備や馬の調教など着々と準備を進めてきた。将来を見据えて初めて実行委員会も設立し、「コロナ禍を経て、次世代へ種をまく大会にしたい」としている。
大会を1週間後に控えた16日、会場となる照島海岸でポニー5頭の練習会があった。3年間中止になったため、浜辺でのレースが初めての馬も多いという。慣れない浜で、背中の馬主らの指示に従って必死に歩を進めていた。騎手として小学生の時から出場している中薗のぞみさん(26)=薩摩川内市=は「何か物足りず、さみしい3年間だった。馬と心一つにまずはゴールを目指して頑張りたい」と力を込める。
串木野浜競馬は日本三大砂丘の一つといわれる吹上浜の北端約1500メートルを使い、ポニーや農耕用の輓馬(ばんば)、競走馬などに分かれてレースを行う。1958年、地元の荷馬車組合が花見の余興として始め、今年で63回目。例年1万人以上でにぎわう。
「コロナ禍では浜競馬に限らずイベントが中止になり、流動人口が減って地域に打撃を与えた」と話すのは実行委員長の久木山睦男市観光特産品協会長(65)。前回まで同協会が主催し、楽しみにしていた人からは落胆の声も聞いたというが安全を最優先に開催を断念してきた。それでも「伝統行事を絶やさない」という思いは強く、昨年は市民が馬と触れ合い、写真撮影できる代替イベントを実施した。
一方、馬主らでつくる串木野愛馬同好会は馬の手配やレース運営を担ってきたが、近年は会員減少と高齢化が課題だった。運営体制強化のため、市や市観光特産品協会とともに実行委を1月に立ち上げた。
コロナ禍で馬や搬送用トラックを手放した馬主もいたが、県内各地から例年に近い52頭を集めることができた。中断していた間に風や波で浜辺の砂が奥にたまってしまったため、重機で整備するなど一体となって準備に取り組んだ。久木山さんは「これまで別々に動いてきたが、一つの組織となり、見える部分が多くなった。課題を改善し、次世代にバトンをつなぎたい」。
馬がさっそうと駆け抜ける姿はもちろん、騎手の指示を聞かずに動かなかったり、海に向かって走りだしたりするハプニングも大きな魅力だ。当日は大会限定のお菓子やさつま揚げなども販売する。久木山さんは「個性豊かな馬が出走し、1日中笑って楽しめる大会。久しぶりに多くの人に来てもらいたい」と期待した。
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浜競馬は午前9時半から午後3時の開催。入場無料。駐車場はなぎさ公園前と市多目的グラウンド。同グラウンド、JR串木野駅と会場を無料シャトルバスで結ぶ。雨天決行。